「異邦からの救世主よ、よくぞ来てくれた」

エオルゼアのどの領主とも違う、若いが自信に溢れた様子の国王だった。

「ピオニー・ウパラ・マルクトだ。この国を預かっている。お前たちの話はジェイドから聞いている。顔を見せてくれるか」
「・・・失礼しました」

ゆっくりと帽子とベールを外す。長い髪が夕陽に晒されて輝く。露わになる角と鱗に、同席していた幹部らしき人の息を飲む声が聞こえた。

「メリーと申します」
「エミリア・ウエストウッドです」
「本当に違う世界から来たんだな」

狼狽えることなく真っ直ぐこちらを見つめる視線。これが王の貫禄か。なんとなくヒエンのことを思い出した。


「さて、褒美をやらないとだな。何が欲しい?家か、金か、領地か?何なら王妃の椅子でもいいぞ。何でも言ってみろ」
「そ、それって」

唖然。エミリアは顔を真っ赤にして口を抑えている。楽しそうな口ぶりだが、冗談を言っているわけでもなさそうだ。横に控えるジェイドをちらりと見ると、呆れ顔だった。

「陛下、ですから困らせてどうするのです」
「そもそもお前の旅の報酬だって出してなかったんだろう?国の恩人に手ぶらで帰らせてたまるか」

なるほど、とようやく納得がいった。隣のエミリアが困惑顔でこちらを見ている。

「陛下、ありがたいお言葉ですが、私たちは何も受け取れません。なぜなら」

一度言葉を切って見回す。全員の視線が注がれている。

「もう二度とこの世界に来ることはないからです」
「・・・理由を言ってみろ」
「ただ1日見ていただけの見解ではありますが、私たちの力はこの国、この世界を揺るがすほど大きい。そうでしょう?」

ジェイドを見れば、一つ頷く。

「えぇ。この国の第七譜術士が束になってもメリー1人に敵わないでしょう。おまけに戦闘能力もずば抜けて高い。私より恐らく強いですよ」
「ほう」
「新たな戦いの火種とはなりたくないのです、陛下」
「尤もだな。ジェイド、お前はどう思う」
「ほぼ同意見ですね。残念ながら」
「そうか・・・仕方ない、それなら宴だ!」
「陛下?」
「最後に食って飲んで帰る分には問題ないだろう?アスラン、手配しろ」
「はっ!」



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