「大丈夫ですか?」

ロビーの見える範囲をあらかた癒し終えたところで彼が問う。あれから片時も休まず回復魔法の連打をしているのを見れば、そう思うのも理解はできる。だがしかし、ここは街中だ。

「魔力なら自然回復で賄えるわ」
「そうですか。しかし貴女自身の疲労も・・・」
「平気よ、だって私自身ずーっと回復魔法を浴びてるんだもの。それに根治してしまわないと、すぐ感染る毒だから休憩している暇はないわ」
「・・・えぇ。次はこっちです」

病人の移動で新たに感染した兵士ごと、一気に回復する。
アーサリースターを設置すると、その光の輪の中にいれば恩恵を受けられると理解した人たちが寄ってくる。アスヘリ、ヘリオス、ヘリオス、アーサリー起動。体力の多い若者にディグニティ。
まるで新手のヒールチェックだ。だんだんと効率化されるスキル回しを、ジェイドは横目で見つつ感心していた。


日が落ちるころには最後の一団を回復し終えていた。

「これで最後です」
「そう・・・良かった」

どこからともなく拍手が湧き起こる。面食らった様子のメリーを優しい目で見つめるジェイド。

「譜術士さんありがとう!」
「おかげで助かりました」
「い、いえ、えっと、どういたしまして」
「おや、狼狽えるとは珍しい」
「だってこんな・・・」

見渡す限りの人たちが皆、自分のことを見つめている。魔導城決戦後も、アラミゴ奪還後だってこんな人数に感謝されたことはない。

「メリーさーん」
「あ、エミリア」
「こっちも終わりました!」
「お疲れ様です。陛下がお呼びですのでよろしければこちらに」
「あぁ、はい」

人々の声援を背中に浴びながら、その場を離れた。



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