気づいたら抱きしめられていた。
暖かさを全身に感じる。目頭が熱くなるのを感じた。
半年という時間はとても長かった。しかし、熾烈な戦いは彼女に考える暇を与えてはくれなかった。激動の半年間だった。
暖かくそれでいて情熱的な抱擁に、彼女は気持ちが安らぐのを感じた。
落ち着く。ずっとこうされていたい。
メリーもまた、ようやく自分自身の気持ちに気づいたのだった。

「すみません」
「謝らないで」

手を伸ばせば届く距離。彼の胸にそっと右手を置く。

「思えば、最初から私は貴方のことを警戒なんてしていませんでした。それがずっと不思議で」

見知らぬ人間、しかもおかしなことを言いながら武器を突きつけられ。
それでもなぜか恐怖を感じることはなかった。
からかわれるのも、触れられるのも、嫌悪したことは一度もない。

「半年間、考える時間があるとすぐ貴方の顔が浮かんだわ。一度、本当に危ないときがあったのだけど、その時に貴方の名前を呼んでいたってエミリアが言うの」

心臓の鼓動を感じる右手に、彼の両手が添えられた。

「私、きっと」
「メリー」

顔をあげれば視線がかち合う。宝石のような赤い瞳に射抜かれる。

「女性に言わせては男が廃りますからねぇ」

楽しそうな声色。彼のこんなに嬉しそうな表情は初めてだ。
緊張して次の言葉を待つ。

「私にとっては、あなたと離れた時間はわずかですが、それでもやはり寂しかったですよ」
「ジェイド・・・」
「・・・そうですね、できるだけ多くの時間を・・・あなたと過ごしたい」

歯切れの悪い答えは、それが現実には厳しいことを示している。自分が置かれた状況を放り出すには難しい立場であるということも、二人の共通項であった。

「私も、同じ気持ちです」

もう一度、彼の胸の中に収まった。
この気持ちが同じものだった。今はそれだけで十分だった。



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