確かに彼女は強い。それは紛れもない事実。 しかし男としては、女性に守られるという不甲斐なさを感じる。 「そういえばメリー、私が帰ってからどんなことをしていたのですか?」 「そうね、いろいろあったわ」 「いろいろですか」 「えぇ、一晩で足りるかしら」 「時間はたくさんありますよ、私にとってはね」 「ふふ、そうよね。待って、コーヒーを入れるわ」 いい香りが立ちのぼる。手渡されたマグカップ。 「ブラックでよかったわよね」 「えぇ。覚えていてくださったのですか」 「まぁね」 一口飲む。初めてここに来た日を思い出す。 そういえばあの時も、彼女にたくさん質問をしていた。 「半年ね。その間に本当にいろんなことがあったわ」 手を貸している組織。人によって産み出された新たな蛮神。謎に包まれた古代兵器。仲間の死。新たな土地に新たな仲間。帝国からの解放。 それは間違いなく、英雄の冒険譚であった。 「ようやく、ひと段落ついたところなの。だから貴方が来たのが今で良かったわ。正直、それどころではなかったから・・・」 「メリー」 すっと立ち上がれば、彼女の視線がついてくる。 目の前に立ち手を取れば、どうしたの?と小さな声とともに彼女も立ち上がった。 手を引けば彼女の華奢な体が倒れ込んでくる。椅子が倒れた音がした。 「貴女が無事で、良かった」 「ジェイド・・・」 小さな体をしっかりと抱きしめる。彼女の腕も、遠慮がちに背中に回された。 ジェイドが考えていた以上に、彼女の周りを取り巻く状況は良くなかったのだ。 過ごす時間が違うということを改めて思い知らされる。 自分の力の及ばない所で彼女が危険にさらされていたという現実。 そうしてようやく、ジェイドは自分の気持ちに確信を持ったのだった。 「すみません」 手を離し、一歩だけ離れる。 メリーは潤んだ瞳で微笑んだ。 back * top |