「つまり、お前は今朝俺に報告に来たあと、執務室に戻って居眠りしたらいつの間にか異世界に飛んでしまって、現地の親切な冒険者に助けられ、数日かけてようやく戻ってきたのが今日の夜だったと言うんだな?」 「えぇ」 「全く訳わかんねぇ」 私室の椅子に腰掛けたまま、頭をわしゃわしゃとかく。 「いや、お前が嘘をつくとは思っちゃいないが、こうまで話が飛躍するとなぁ・・・」 「私もなかなか信じられませんでしたよ」 「さっきまで着てたあの服、向こうの冒険者がくれたのか?」 「そうです、彼女が作ってくれました。この軍服では目立つ、と」 「彼女、なぁ・・・なんでそいつも一緒に連れて来なかったんだよ」 「彼女には彼女の生活がありますからね」 「んあ?」 予想外だったらしい返答に、急にこちらに驚愕の表情を向ける。 そして一転、にやりと嫌な表情へと変わる。 「なぁ、その彼女とやらとはずっと一緒だったのか?」 「そうですよ?」 「美人か?」 「陛下、ふざけてる場合ではありません」 「ふーん、なるほどねぇ」 「なにがなるほどですか」 「お前その娘に惚れたんだろ?」 「、」 一瞬固まったのを見逃すあの方ではなかった。 「陛下、ご冗談はほどほどになさってくださいね?」 「図星だな?彼女には彼女の生活があるから、なんざまるで断られなければ連れてきたみたいな言い分だ」 「・・・夜食にブウサギのステーキを頂くとしましょうか」 「お、おい、それはやめろ」 本気で慌てるピオニーを横目に、ひとつ大きく溜息をついた。 「・・・別に連れて来ようとは最初から思っていませんでした」 「そうなのか?」 「ハイデリンは、あなたの思うがままに、と言った。それが本当なら行くも戻るも自由なはずです」 「お前・・・」 「陛下、私に休暇を下さい。可能なら向こうの生活に基づく魔法や科学を調べて、こちらで応用したいんですよ」 「・・・言いたいことは分かった。新たな技術が入ってくるのは確かに有用性もあるだろう。お前にならその扱いも任せられる。だが、条件がある」 「なんですか?」 「まずは研究所に行って全身くまなく異常がないか調べて来い。許可を出すのはそれからだ」 back * top |