間違いない。
あの時夢で見たのはここだった。
確かな記憶があるわけではないが、己の勘がそう叫ぶ。
巨大な青いクリスタルを中心とした、青白く輝く幻想的な風景。
その中にふわりと浮遊していた。


「おかえりなさい、光の戦士よ」


声が響く。あの時の声とは違う声だが、本質は同じであると不思議と理解していた。

「おかえりなさい、ですか。私はこちらの世界の人間だとでも?」
「あなたにとっての第二のふるさと、それがこのエオルゼアです」
「ふむ、やはり私がこちらの世界に来たのは、何か理由があるということですね?」
「・・・詳しく話すには時間がありません。あなたにクリスタルの加護があらんことを・・・」

光が弱まっていく。

「待ちなさい!私はオールドラントに戻れるのですか」
「・・・あなたの思うがままに」

その一言を最後に、世界は暗転していった。




気がつくと、マトーヤの洞窟へと戻ってきていた。
私の顔を覗き込む3人。

「おかえりなさい。何か収穫はあったの?」
「・・・そうですね」
「取り敢えず移動しようぜ」
「そうしましょう。マトーヤ様、お邪魔しましたー」


無言で見送るマトーヤを背に、洞窟の外へ出た。
少し歩いて、陽が当たる場所まで移動する。
メリーが、地面にから突き出た岩に腰をおろした。

「街まで戻ると誰に聞かれるかわからないから、取り敢えずこの辺りで」
「はい」

見たまま、聞いたままを伝える。
あまりいい結果とは言えなかったが、とにかく当初の目標は果たした。

「あなたの思うがままに、ねぇ」
「帰ろうと思ったらいつでも帰れるよーってことだったりして」
「それならこんなに苦労してないだろー」
「・・・いえ、確かにそうかもしれません」
「え?」
「私は、現状を把握しようとするばっかりで、帰ろうとはそこまで焦って考えていませんでした。帰ろうと考えたら帰れるということでしょうか」
「ジェイド!光が・・・」

ふと、足元から湧き上がる光が見えた。
下を見れば、足の辺りが光につつまれている。だんだんと足から順に透けて、その向こうの地面が見えるようになってきた。

「どうやらその通りだったようですね」
「じゃあ、これでお別れってことかしら」
「ジェイド」

リーダーが一歩踏み出して握手を求める。
応じて、しっかりとその手を握った。

「本当はもっと色々聞きたかったんだが・・・まぁしょうがない。元気でな」
「えぇ、貴方も」

手を放すと、リーダーと入れ替わりでエミリアが手を差し出す。

「いやー、すっごい貴重な体験させてもらいました!楽しかったです!」
「それは光栄です」

最後に残ったメリーは、鞄を漁っていた。
見覚えのある青の軍服を差し出される。

「はいこれ。お返しするわ」
「ありがとうございます。今着ているこの服は・・・」
「それくらいあげるわ。記念にね」
「では、ありがたく頂戴します」

胸のあたりまで光がのぼってくる。残された時間は僅かのようだ。

「お世話になりました、メリー」
「本当にね。でも私も楽しかったわ」
「私もです、エミリアさんの言葉じゃありませんが、貴重な体験をたくさんさせていただきましたよ。本当はもう少しこの世界について知りたかったのですが、仕方ありません」
「そうね。まだ見せたいものがたくさんあったわ」
「ではメリー、お元気で」
「ジェイド、貴方もね」

繋がれていた手が離れる。
もう形としては見えなくなった手を伸ばし、彼女の頭をそっと撫ぜた。
そして、無数の光につつまれていった。


彼は光とともに消えていった。
最後に私の頭をひと撫でして。
すでにその手は見えなかったが、きっとそうだ。
いつになく優しい表情と、頭の上の暖かさを記憶に残し、彼は消えて行った。


「・・・行っちゃいましたね」
「そうね」
「しかし不思議な依頼人だったな」
「・・・そうよ、依頼!!」
「どうしたんです?」
「私報酬もらってないわ!」
「・・・」

しんと静まり返る。笑い声が静寂を乱す。

「っく、あははははは!」
「うわああ、ふふふふふ、どんまいですよメリーさん、ふふふふふ」
「もう!・・・まぁ、しばらくツケておくわよ」

笑い声はしばらくおさまらなかった。



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