扉の奥は、何とも不思議で幻想的な空間だった。
ずっと遠くに、逆さになった塔が見える。あの奥に行くのだろう。
通路は途中で途切れているようだが、はたして・・・

「さて、準備いいかい」
「一応確認だけど、今日は安全に彼を最上層まで連れて行くことが第一目的よ。時間はいくらかかってもいいわ。安全重視でね」
「はい!」
「ヒラ2なんだしボス戦くらいデストで・・・」
「ダメよ。今回はずっとディフェンダーでいなさい。火力は彼だけで余裕のはずだから、絶対に敵視を揺らさないこと」
「・・・了解」
「エミリアも、今日は無茶せずヒールしっかりね」
「はい、大丈夫です!」
「ジェイド」
「はい」

彼女と目が合う。さっきまでとは違う、真剣そのものの表情だ。

「ここはもう私たちだけの空間だから、好きに攻撃していいわよ」
「ようやくですね」
「ただし、敵の前方に立たないこと、リーダーより先に進まないこと、私が移動の指示を出したら攻撃を中断してでも最優先で従うこと。安全の為にこれだけは守って頂戴ね」
「わかりました」
「これくらいかしらね、じゃあ行きましょう」


通路を歩いて行くと、カエルの魔物が待ち構えていた。
彼が斧で一発を食らわせることで戦闘が始まる。
敵が3匹に増えた。それをビルが一人で相手をする。
横のメリーとエミリアは魔法で敵を攻撃し始めている。

二人に味方識別を施し、譜術の詠唱を始める。

「大地の咆哮 其は怒れる地竜の爪牙。グランドダッシャー!」

大地が割れて岩の塊が飛び出す。的確にダメージを与え、魔法が消える頃には敵も倒れていた。

「え、は?」

驚愕の声を上げるのはリーダー。
私と消えゆく魔物の残骸とを交互に見ている。

「言ったでしょう、彼は強いって」
「いや、強いっていったら零式プレイヤーくらいを想像するだろ?魔法一発って、しかもなにさっきの魔法初めて見たけど、何者?」
「ただの異星人ですよ」
「い、異星人ってまじか・・・確かに詠唱も独特だったけど、一体どういう」
「はいストップ。きりがないから行くわよ」
「待てよ、メリーは知ってるのか?」
「譜術という名前しか知らないわ、ほら進む進む」
「しかしだな・・・」
「ふふっ」
「どうかした?ジェイド」
「いえ、本当にメリーが言った通りになったなぁと思いまして」
「何言ったんだ?」
「この戦い方が冒険者に見つかると、珍しすぎて面倒なことになるとか」
「・・・わかったよ」
「ふふふ」



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