村を横切り、一軒の家に入っていく。

「マルスシャン、お久しぶりね」
「お!誰かと思えばお前さんか。追想の旅以来か?いつの間に恋人なんか作っちまって」
「恋人?」
「私のことでしょうか?」
「・・・違うわよ、恋人じゃないわ」
「そこまできっぱり否定されると些か傷つきます」
「貴方は!話しをややこしくしないで」
「くくく、これは失礼」
「おーい、仲が良いのはいいが、何か用があったんじゃないのか?」
「そう、そうよ。この人をイディルシャイアまで護衛する旅の途中なのだけど、ここで一晩休んでいってもいいかしら」
「そういうことならお安い御用さ。チョコボで来たんならそいつも休ませてやるといい」
「ありがとう、助かるわ」
「ありがとうございます」

家の外のチョコボ用の小屋に入れる。
任せてください!と言ってきた若い青年に赤いチョコボは預けられた。

「貴女のチョコボだけ随分違って見えますが・・・」
「そうね。私のは2人乗り用の大きい種だから。そのあたりにたくさんいるほうが普通のチョコボよ。このあたりは野生のチョコボがいるから、それを捕まえてきたりするの」
「なるほど。ここは猟師町ということですね」

すっかり日が暮れていた。
食事を取り、貸してもらったベッドに座る。
隣のベッドは誰もいない。彼女はどこに行ったのか。

なんとなく気になって外に出れば、チョコボ厩舎の近くに人の影。

「メリー」

そう呼びかけると、振り向くのがわかった。
隣に立ってようやく顔がはっきり見える。
家の陰になっているこの場所は、照明が少なく薄暗かった。

「あらジェイド、どうしたの?」
「貴女が部屋にいないのが気になったものですから」
「まさか置いて逃げたりしないわよ」
「そんなことは心配していませんよ。どこかで迷子になっていたら困るなぁと」
「・・・案内している私が迷子になる訳ないでしょう」
「冗談ですよ」
「・・・」
「ですが、少し不安を感じたのは確かです。貴女が私を置いて行くような方ではないのは理解していますが、もし離れ離れになってしまったら私は身動きが取れなくなってしまう」
「随分弱気ね。そういうキャラだったの?」
「まさか。自分でも珍しく思っていますよ」
「そう。それなら・・・『ジェイド、貴方をハウスメイトに設定します』」
「ハウスメイト?」
「私の家の共同生活者に登録したということよ。これで私の家に直接テレポできるわ」
「良いのですか?防犯的にはよろしくないのでしょう?」
「確かにそうだけど。これで貴方が安心できるなら」
「ありがとうございます。しかしもし私が敵になるようなことがあったら?」
「その時は登録を解除して、身動き取れなくなるようにするだけよ」

にっこりと微笑む彼女。
わかりました、と微笑み返して、今日の寝所へと帰っていった。



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