「さて、今日はあと少し進むわよ。ドラゴンヘッドまで行きましょう」


だいぶ日が傾いてきた。
ひたすら真っ直ぐと道を進むと、城壁の向こうに青白い光がぼんやりと見える。エーテライトだろう。

日が沈み切る前になんとか到着出来た。
エーテライトとの交感を終えると、ある建物の中へと誘導された。

「コランティオ、久しぶりね」
「メリー!よく戻ってくれた」

声をかけたのは甲冑を着て剣を携えた長身の男性。角も尻尾も無いが、とがった長い耳が見える。彼女とはまた違う種族なのだろうか。
その男の目が隣にいる私を捉える。
彼女の紹介に合わせて会釈を返した。

「そちらは?」
「彼はジェイド。彼をイディルシャイアまで護衛する依頼を受けているのだけど、一晩雪の家を使ってもいいかしら?」
「あの部屋は、我が主から貴公への贈り物。遠慮など無用だ。しかし、イディルシャイアとはドラヴァニア地方だろう?随分と遠い所まで行くのだな。商人には見えないが・・・」
「彼は研究者なのよ」
「ほう、何の研究をしておられるのだ?」
「あ、それは・・・」
「音の研究ですよ」

言葉に詰まりかけた彼女を制した。
彼の目がこちらを向く。

「音か。それはなかなか珍しいな」
「えぇ、そうでしょうね」
「ふむ、グリダニアではかつて弓の弦を弾いた吟遊詩人が活躍したと聞いているが、その関係だろうか?」
「よくご存知でいらっしゃいますね、その通りです」
「なるほど、しかし何故ドラヴァニアまで?」
「実は、その道の第一人者という方がイディルシャイアに居るという噂を聞きまして」
「ほう、どんな方なのだ?」
「それが私もよく存じ上げないのですよ、噂を耳にしただけですから」
「それだけの情報で向かうのか」
「えぇ、丁度研究が行き詰まっていた所でしたので、僅かでも手掛かりがあればと思った次第です」
「そうか・・・僅かの可能性にも賭ける、それはイイ志だな。深く聞いて済まないな、ドラヴァニアへ行くということは大審門を通るのだろう?ここ最近は昔に比べれば随分開いているのだが、それでも出来るだけ確認するよう言われていてな・・・」
「構いませんよ」
「感謝する。貴公が同行しているなら問題はないと思っていたが、念の為というやつだ」
「実はちゃんと通れるか少し心配だったのよ。こちらも助かるわ」
「私から門番にも伝えておこう。今日も寒いが、ここでしっかりと暖まっていくといい」
「そうさせてもらうわ、ありがとう」

建物から出て横の細道を通って行くと、奥に見張りの兵士が立っている。
彼女に気がつくと、ピシッと敬礼をして道を開けた。
部屋の中に入る。
大きな会議机に椅子が数脚。
シンプルな部屋だが暖炉に火が灯っていてとても暖かかった。

「ありがとう、ジェイド」
「何がです?」
「咄嗟に話を合わせてくれたでしょう。助かったわ」
「あぁ、大したことではありませんよ。それに別に嘘は言ってないですからねー」
「ふふ、機転がきくのね」
「軍にいるとこういうことにも慣れてしまうのですよ」
「あらあら、大変ねぇ・・・」



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