「あぁいったことはよくあるのですか?」

チョコボに乗ろうとしている目の前の彼女に尋ねる。

「滅多にないわ。ほとんどの人は好意的なのだけど・・・」
「英雄殿!」

黄色い軍服のようなものを着た男性が駆け寄ってくる。

「先程は失礼いたしました」
「いいえ、大丈夫よ」
「イクサル族に関しては、我々双蛇党で対処致しますので・・・どうか道中、お気をつけて」
「ありがとう。では行きましょう」

チョコボに跨り、手綱を引くと再び走り出す。

「ほとんどはあんな感じなのだけどね」
「それにしても英雄とは。私は随分と偉大な方に拾われてしまったようですね」
「英雄と言っても別に私だけが特別な訳じゃないわ。たくさんいる英雄と呼ばれた冒険者のうちのひとり、ってだけよ」
「そうなのですか?神狩りというのは?」
「イクサル族を始め、ヒト以外の獣人を蛮族と呼ぶわ。彼らには彼らの信仰する神がいて、大量のクリスタルと信者の祈りによってその神が顕現されるの。蛮神というわ。蛮神は大地のエーテルを大量に消費する。敵対する相手に対し攻撃を仕掛けてくることもある。それでこれを倒す必要があるのよ。蛮神を討滅したことのある冒険者に、神狩りなんていう異名がついているというわけ」
「・・・途方もない話ですね」
「そうね、本当にそう思うわ」


会話は続かず、チョコボが大地を駆ける音だけが耳に届く。
帝国の支配から地域を守り、更に神をも倒す英雄・・・
この世界の冒険者とは、一体・・・


しばらく走ると景色は変わり、一面雪景色になっていた。

「貴方の故郷もこんな感じかしら?」
「そうですね、街の外れはこんな感じですよ」
「雪の街・・・素敵でしょうね」
「観光客は多いですが、出身者としては寒いばっかりで嫌にもなります」
「ふふ、そうかもね」


アドネール占星台という場所で一旦休憩を取る。
目の前に聳える高い塔は、竜星という星を観測して、竜の動きを予測していたそうだ。
竜との千年戦争をしていたイシュガルドならではの特色。
そうやって星を見ている人を占星術師というらしい。

「そうそう、これも占星術士の装束なのよ。ただし私は竜星だけを見るのではなくて、色んな星を見て力を借りて癒しや攻撃の力を得ているの。ちなみにこっちが本家ね。イシュガルドでは対竜のための占星術師しかいないから、私達シャーレアン式は極少数派でとてもやりづらかったわ」
「先程私の傷を治したのも、その占星術士の技なのですね」
「そうよ。これが私のメインジョブ。一番使い慣れているってことね」
「おや、そうだったんですか」
「そうよ、貴方が前に言ってたように、ヒーラーがパーティの要だからかしらね。楽しいのよ」
「楽しい、ですか」
「えぇ」


嘘を言っている訳ではないようだ。
パーティの要、つまり一番大事な役割。
仲間を助けるヒーラーとしての責任もかなり重たいはず。
それを、楽しい、と。
一体何をしてくればそれが楽しいと思えるのだろうか。

隣でサンドイッチを頬張る彼女は、とても平和そうだというのに。
彼女に対する興味がますます湧いてくるのを実感していた。



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