翌朝。1階のテーブルでエオルゼア文字を書く練習をしていたところ、女性らしからぬ寝癖と不機嫌さで降りてきた彼女に(恐らく彼女にとっての)目一杯の嫌味を浴びせられた。 嫌味と言っても自分にしてみれば可愛らしいものだ。 それに、口撃をしつつもきちんと朝ご飯を2人分用意してくれるあたり、根はやはり優しくて悪人になりきれないのだろう。 そして、いつの間に用意したのやら、服を一式差し出された。 その軍服すごく目立つわよ、と言われれば着替えないわけにもいかず。 昨日の彼女の普段着とそっくりだ。まぁ当の本人は今日はまた鎧姿だが。 仕度をして外に出る。 昨日の桟橋から船に乗ると、今度は違う方向へと進んだ。 船の上でメリーが様々な予備知識を入れてくれる。 「森都グリダニア。国のトップはグランドカンパニー双蛇党の党首、カヌ・エ・センナ。精霊の意向に重きを置いている国で、少し古くさい国って感じかしらね」 船を降りると、立派な緑に囲まれた街がそこにあった。 自然と共存するように出来ている街。彼女の言ったような自然との調和を重んじていることが窺える。 「さて、取り敢えずマーケットにでも行きましょうか」 行き交うたくさんの人、人、人。 変わった服を着ている人は早足で通り過ぎ、自分のような服を着ている人はのんびりと過ごしている。 彼女が言うには、それが冒険者と一般市民の違いらしい。 商店街を通り抜けて開けた通りに出たところで、声を掛けられて彼女の足が止まる。 「メリーさん!」 「あらエミリア、おはよう」 振り返ると、メリーより少し背の高い茶髪の女の子が立っていた。 身長こそその子のほうが高いが、まだあどけなさの残る顔をしている。 普通の耳に尻尾も鱗もなく。やはりアウラのほうが少数派らしい。 「おはようございます!あの、そちらの方は?」 「今受けているクエストの依頼主よ、ジェイドさん」 「初めまして、ジェイドといいます」 名前だけ紹介した彼女に合わせて、挨拶をする。 ぺこりとお辞儀が返ってきた。 「エミリア・ウエストウッドです。メリーさんクエスト中だったんですねー」 「そうなのよ。あ、そうだ、ヤ・シュトラがどこにいるか知らない?」 「ヤ・シュトラさんですか?確かイディルシャイアにいたと思いますけど、どうかしたんですか?」 「イディルシャイア・・・いやね、少し依頼の関連で彼女に聞きたいことがあるのよ」 「あー、動けない感じですか?私探してきますよ!」 「あら本当?お願い出来るかしら」 「任せてください!」 そういうと、俯いて片手を顔の前で握ると紫色の光に包まれる。 光が弾けた途端、彼女の姿は消えていた。 「これは・・・」 「テレポというのよ、エーテルの地脈の流れに乗って瞬間移動が出来るの。そうだ、こっちに来て」 連れて来られた目の前には、大きな大きなクリスタルの塊。 青白い光を放っていて、とても綺麗だ。 「これに手をかざしてみて」 「こうですか?」 そのクリスタルに向かって手を伸ばす。すると青い光で自分とそのクリスタルが繋がった。不思議な気分だ。 しばらくすると自然とその光はおさまった。 「これは?」 「さっき言った転送網のひとつよ。瞬間移動出来ると言ったけれど、一度来たことがあって、このエーテライトにそうやって交感しておかないといけないの。だから行ったことがない場所には行けないのよ」 「なるほど・・・」 瞬間移動。オールドラントからすれば夢のような技術だ。 エーテライトという名前からするに、この世界の重要な構成要素であるエーテルを用いた技術なのだろう。 back * top |