手元にはエオルゼア文字の一覧表。
幸いなのは、音や表記がほぼ変わらなかったことだ。
メリーに書いてもらった一覧表に、対応するフォニック文字も書き込む。これで取り敢えず読めるだろう。
しかし論文のような本を読むとなると、完全に覚えて無意識に読めるようにしなければならない。

「やれやれ、老体には過酷な試練ですねぇ」
「・・・貴方お幾つなの?」
「35ですよ」

そう言って目の前の彼女の反応を見る。
そういえば彼女もなかなか年齢不詳だ。身長は150センチ程度でとても小柄で全体的に華奢だが、雰囲気は完全に大人のそれだった。
そして期待したような反応はなく、全く驚いてる風でもなかった。彼女もそれなりの年齢なのだろうか?

「何よまだまだじゃない。それにそういう割には楽しそうに見えるわ」
「頭を使うことは得意なのでね」
「軍人さん、だったわよね?」
「そうですよ、ですが昔は研究もしていました」
「研究者、なるほどね」

彼女は別の紙を取り出すと、さらさらと何かを書いてこちらに寄越した。

「さぁ例文よ。読んでみて」
「おやおやスパルタですね」
「ふふふ、やる気があるのはいいことよ」


手元の対応表を見ながら解読してゆく。

『わたし は アウラ という しゅぞく です。
つの と うろこ と しっぽ が とくちょう です』

「ほう」
「あら、もう読めたの?」
「えぇ。その角や尻尾は飾りではなく本物だったんですね」
「そうよ。まだこのエオルゼアには少ない種族だから、特異な目で見られることも多いわ」

さらりと語られた差別問題。だいぶナイーブな話題だと思うのだが彼女は全く意に介さず、といった雰囲気だ。
祖国のレプリカ問題が思い起こされる。まぁそれとは訳が違うだろうが。



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