「貴方、強いのね」

そう言いながら歩いてジェイドの元に戻ってきた彼女の頬に手を添える。
伏し目がちな瞳が怪訝そうにこちらを見ている。
その頬や額には黒い鱗のようなものが見え隠れしていた。が、気になるのはそちらではなく。

「怪我をしています」
「これくらい放っておいても治るわ。・・・けど気になるのなら」

そう言い、一歩離れると剣を目の前で真っ直ぐ立てて詠唱を始める。
そして詠唱終わりと同時に優しい光が降ると、彼女の傷が綺麗に癒えていた。

「第7譜術士だったのですか」
「セブンス・・・なんですって?」

彼女の言葉で、疑念が確実となった。どうやらここは自分が元いた世界ではないらしい。

「私は、オールドラントという星のマルクト帝国首都、グランコクマという所から来ました」
「・・・ごめんなさい、全然知らないわ。ここは惑星ハイデリンのアルデナード小大陸にある、エオルゼアという地域よ」
「地図がありますか?」
「エオルゼア全図なら」

そうやって見せてもらった地図には、間違いなく知らない地形に、知らない文字が並んでいるのだった。

「どうやら私は全く知らない星に来てしまったようです」
「そのようね・・・」
「ありがとうございます、おかげで状況がわかってきました」
「どう・・・するの?」
「さて、どうしましょう」

ふふふ、と軽く笑ってみせると、彼女が何かを考えついたように頷いた。

「いいわ、一緒に来て」
「おや、いいのですか」
「行くところ、ないのでしょう?」
「そうなりますねぇ」
「乗りかかった船だわ」

そう言うと彼女は徐に指笛を吹いた。
どこからともなく現れた、赤い羽根の巨大な二足歩行の鳥。

「乗って」

手を差し伸べられて、彼女の後ろに跨る。
座っても彼女より頭ひとつ以上大きいので、高い位置からの眺めがよく見える。

「振り落とされないでね」

そう言って手綱を引き、なかなか揺れる旅が始まった。



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