「貴女の名前と所属を」
「メリー。所属は・・・グランドカンパニーは一応黒渦団に入っているけど、一介の冒険者よ。フリーカンパニーなら未所属」

グランドカンパニー、黒渦団、フリーカンパニー。聞きなれない単語がこれだけの会話で次々出てくる。

「・・・冒険者ですか。随分腕が立つご様子ですね」
「それなりに死線を潜ってきたもので」
「そうですか」
「貴方は誰なの?」
「私ですか?マルクト帝国軍第3師団所属のジェイド・カーティス大佐です」
「帝国、ですって」

彼女が僅かにたじろいだのが感じられた。
敵と再認識した声色に、緊張が走る。

「おや、貴女にとって帝国は敵でしたか」
「ガレマール帝国なら、確かに敵よ」
「ふむ」

ガレマール帝国。自分の知る限りでは存在しない国の名前だ。ジェイドの中でひとつの仮説が立ちつつあった。

「ところでここはどこですか?」
「どこって・・・東ザナラーンよ。貴方一体どこから来たの?マルクトなんて名前聞いたことがないわ」
「私もそれが知りたいんですよ、いやー困りましたねぇ」

明らかに困惑を浮かばせる彼女。
その時、斜め後方から何やら動く気配が。彼女も敏感に察知したようで、そちらを向いている。
ちょうどぎりぎり岩の陰になっていて、向こうは気付いていないようだが、そこにいるのは鬣を持った大きな獣だった。

「マヘスね。この距離だと気付かれずに逃げられるか微妙な所だわ」
「戦うのですか?」
「そうしたいのだけど・・・」

ジェイドは拘束を解く。驚いた彼女の視線がかち合った。淡い紫色の、不思議な瞳。

「一時休戦としましょう」
「いいわ。終わったらまた話は聞くから、貴方は隠れていて」
「おやおや、女性をひとり置いて隠れたりなど出来ませんよ」
「・・・貴方も戦うのね。前衛?」
「いえ、後方から術で焼き払います」
「わかったわ」

そう言うが否や、不思議な音を立てたと同時に彼女は先程までとは違う鎧を身につけていた。
青と銀の美しい鎧、そして携えられているのは剣と盾・・・
落ちていたはずの斧はいつの間にか消えていた。

「行きます。出来るだけ遠くから詠唱を」

そう言って彼女は勇敢にも突っ込んでいった。
味方識別を彼女に施し、詠唱をはじめる。
ちらちらと彼女の戦闘を観察するのも忘れずに。

斧を振り回していた時よりはどうやら防御重視のようだ。
時々盾を構えているのが見える。

「エクスプロード!」

大きな火の塊が落ちて広がる。
敵がこちらを向いた途端、彼女が盾を振りかぶり、勢いよく魔物の頭にヒットさせる。敵は動きを止めた。あれは痛そうだ。

「グラビティ!」

重力によって動きを一時的に弱めるが、怒り狂った様子の敵は仕返しとばかりに爪によるすばやい一撃を彼女に見舞う。丁度剣を振るっていた彼女に直接当たるのが見えた。
背筋が凍る。しかしジェイドの心配を余所に、彼女は何事もなかったかのように剣を振り続けている。

「これで終わりです、インディグネイション!」

天からの強烈な雷が命中し、その魔物・・・マヘスは力尽きた。




ホントはマヘスはスタン効きませんが、まぁご愛嬌。



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