聞いて、感じて、考えて・・・





気が付けば、そこは荒野だった。

先程までいたはずの風景とは余りに違う有様に、流石のジェイドも頭を抱えた。
確かに、自分の執務室にいたはずだ。そして少しソファで転寝をした。そこまでは確実。
いくらかの仮眠を終えて、手探りで眼鏡をかけて立ち上がり、目を開けたらこれだ。
夢かもしれないと思うも、それはないとすぐに自分で打ち消した。流石に夢と現実の違いくらいは理解している。

辺りを見回す。ごつごつとした岩があり、木や草もほどほどに生えていて、羊のような動物が遠くに数匹いるのが見える。
見える限りでは人は・・・いや。
とっさに岩陰に隠れると、一人の小柄な女性が走ってきた。
ジェイドからやや離れた地点で立ち止まると、片手を高く掲げる。
その手の上に、大きなカードのような形の絵柄が浮かび、光と共に消えていった。
消えると同時に今度は武器を構える。女性に似合わない大きな両刃の斧だ。
そしていきなり現れる魔物を、ばっさばっさと斬り倒していく。
ああも大きな斧を軽々と振り回し、時に金属音を響かせながら魔物をひたすら倒す。その姿に些か感心していた。
ジェイドは機会を伺っていた。回りにはやはり誰もおらず、彼女ひとり。
不意をつければ問題はないだろう。

魔物を狩り終えたのか、その斧を仕舞う。その時。

「アブソリュート」

やや小声で放たれたその術が、彼女のさらに向こうにある木を氷漬けにする。
驚いて彼女が奥を向いたその瞬間、ジェイドは飛び出し後ろからその白い首筋に槍の刃を宛てがった。
そして気がつく彼女の不審な点。
本来耳があるべき場所にあるのは、硬そうな黒い角だった。よく見れば同じような色の尻尾もついている。
武器を突き付けたジェイドのほうが動揺する一方、突き付けられた少女は冷静そのものだった。
動揺を悟られぬよう、意識した低い声を発する。

「武器を捨てて頂けますか」
「・・・何故?」

やや苛立ちを感じる声。どこか神秘的だがしっかりとした意思を感じる声だ。

「少し聞きたいことがありまして」
「・・・貴方は人に物を尋ねる時、槍を突き付けるのが礼儀と思っているのかしら」
「現時点では、貴女が敵か味方か判断が付かないので」
「こんなことをされた時点で敵認定するわよ」

そう言いつつ、大きな斧を地面へと落とす。重厚な音が立った。





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