「よぉ」 暗い宇宙をただ見つめているその小さな背中に、声をかけてみた。 ゆっくりと振り返った彼女がそっと口を開く。 「こんにちは、あなたは?」 「ほぉ…お前、俺が違うって分かるのか」 「なんとなく、ですけどね」 一目で俺を見破られたのは初めてだ。 コイツは何者なんだ? 彼女はまた背を向け、なにもない宙を見つめている。 「外に何かあんのか?」 「…いいえ、ですが」 ゆっくりと目を閉じ、一呼吸いれでまたゆっくりと目を開ける。 「宇宙はどこまでも広がってて果てしない、その中のほんのちっぽけな私が何かしたって宇宙は変わらないんですよね」 真っ黒な瞳が、微かに揺れた。 「私は、何をすればいいのか、何をしたいのかわからなくなる時があるんです」 「お前、自分からここに来たんじゃねぇのかよ」 「その通りです、でも、時々自分がわからなくなる」 「…変わってんな、お前」 「そうかも、しれません」 ゆっくり立ち上がってこちらを向く。 黒い瞳にはいつもの色が戻っている。 「ありがとうございました、少し気が晴れたように思います」 「別に、俺は何もしてねぇよ」 「いえ、話を聞いてくださって、嬉しかったです」 ふわりと微笑む。 しかしその表情にはどこか憂いを含んでいる。 「私はレミリアと言います」 「…ハレルヤ」 「ハレルヤさん、また会いましょう」 背を向けて行ってしまった。 何とも言えない感覚が襲ってくる。 あんな女は初めてだ。 彼女の瞳は語らない 意図が、読めない。 |