7
「寒い」
寒さに弱いのは知ってはいたが、まさかここまでだとは思わなかった。コートを含め、四枚も着込んでいるにもかかわらず、ガタガタと震えているビヨンは先ほどのような呟きを落とした。北海道の早朝、といったらそれはもう凍えるほどだろう。引き抜かれて日本へやってきているビヨンは、各地を飛び回っている円堂に付き合わされている。
今回は白恋とイナズマイレブンジャパンのメンバーを半々に入れ替え、混合試合をするとの名目のもと、この早朝から食事を終えた面子がグラウンドに集まり始めている。
「お前も走り回ったら温かくなるぞ」
雪にはしゃいでいるディランとマークが頬を上気させているのを横目に、佐久間は言い放った。昨日着いたときは日が暮れ始めていたので、思う存分には遊べなかったのだ。
「いまここから立ち上がれる気がしない」
「ほら、そんなこと言ってないで」
ビヨンは差し出された手を逆に引いて、座している自分の方へ佐久間を引き寄せた。温かさを求めてのことだろうが、服の中に手が侵入してくる。背中や腕に当たる、ひんやりとした感覚に息を飲んだ佐久間は相手を押し返そうとしたが、どうにもできずにいる。
「俺をカイロ代わりに使うな!」
「むしろカイロがお前代わりだ」
佐久間の肩に顔を乗せたビヨンが猫のようにすり寄ってくる。首の付け根に軽くキスをされながら、体温が同化していった。
後ろの方で、二人の様子に気がづいたディランとマークの茶化す声を聞き、我に返った佐久間が抵抗を強めるも、けっきょくメンバーが揃ってウォーミングアップが始まるまでは、解放してもらえなかった。