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 愛し合っている、それはもう確実に。それでもマークにとって一之瀬は憧れのままで、一歩引いてその一之瀬を見つめていることが多かった。一之瀬が選ぶことは全て正しく、マークの中では必ず正当化され、何でも寛容に許したし、できることは惜しまず行っていた。ベタ惚れもいいところである。

「カズヤ…っ、」
 ゆえにそんな対象が跪いて自分の足を舐めている姿を前に、マークは卒倒しそうになっている。いつもの凛とした印象を唯一一之瀬の前では変える彼は今、声を震わせ、瞳を濡らし、白皙の肌を赤くしながら艶めかしい唇を開くのである。膝小僧を濡らしていた舌先が下へと移動する。ゆっくり、優しい手つきでスパイクを脱がされながら、その口で靴下を下げられる。もどかしいほどの動きに恍惚としながら、マークは思わず口元を押さえて目を細めた。

「マークの足は本当に綺麗だね」
 引き締まって形のよいラインを慈しみ舐めとる一之瀬に言葉を詰まらせる。マーク自身はサッカー中にいくつもの傷がついてしまった己の足を綺麗などと思ったことはなかった。忍びなく思いながら、足先へ神経を研ぎ澄ませる。

「綺麗だよ」
 マークの思考を読んでいるかのようにそんな言葉を放った一之瀬は、足首にたまった靴下を一気にはぎ取るとくるぶしを口に含み、わざとらしく音を立てた。側面からまわり、足の裏へ移動した舌頭に、大げさに肩を震わせたマークを、口内で笑い声をもらした一之瀬がせめたてる。

「汚い、から」
 このあと始まる午後練習の前に、特段出てしまった汗を流したとはいえ、足は不潔だ。そんな箇所を崇拝している一之瀬が舐める、背徳的な思いはひたすら甘く、マークを参らせていた。

「汚くないってば」
「っ、ひァ、」
 指の間を丹念に舐められ、短パンの中、太ももに一之瀬の手が触れたことで漏れた声に羞恥心を覚えたマークは、はっとして唇を噛んだ。

「我慢しなくて、いいよ」
 舌を動かす合間にそんな言葉を放った一之瀬は相変わらず笑みを浮かべている。

「マークは可愛いなあ」
 クスクスとした笑い声を含みつつ、そんな言葉を呟く唇に愛おしさは募り、マークをかき乱す。そのことを承知してなお、追い詰めるように舌頭を指の間に沿わせた一之瀬は、愛おしい人を見上げてその微笑みをどこか酷薄なものにした。


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