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※18禁小説注意






 獣のような性交である。佐久間はいつでも主導権を握るべく奮起するのだが、こういった場面で180度表情を変える源田はそれを許さなかった。いつもは愛を囁く唇で辛辣に追い詰め、いつもは花にでも触れるような指先が肌に食い込んでくる。狡猾な笑みを浮かべる源田は佐久間が拒めば容赦はしない。欲望の赴くままに組み敷かれ、暴れる肢体をロッカーに押さえ付けられた。大凡恋人同士のそれとは思えないほどの凶暴さで暴れる佐久間の唇に噛み付いて求める源田には、最早理性の欠片もない。そのくせ意地の悪い、どこか策士のような装いで肉体的に、精神的に愛おしい恋人を追い詰めていく。殴ろうとした腕を掴まれ、蹴ろうとした足を掴まれ、挿入しやすいような、屈辱的な体勢にさせられ、秘部をまじまじと見つめられる。

「ひくついてる」
「黙れ!」
 にやり、笑みを浮かべた源田はその入り口に爪を立てた。身を捩らせる佐久間に容赦なく指を入れ込んで中を蹂躙する。負担を無くす優しさではなく、挿入可能にする単なる作業のようなそれにも甘い声を発してしまう佐久間のこめかみから汗が流れた。どんなに抵抗してもやがてその挿入は開始される。この痛みにも慣れ始めている自分を嫌悪しながら、この先に待つ快楽を予感した体が戦慄く。
「うぁっ、ん……」
「まだ動いてないぞ?」
 痛みで感じている様子の佐久間を満足そうに見下ろす源田は、赤い唇を見せている。憤りを露わにして、源田の胸を押し返す。
「佐久間」
 普段では考えられないような冷徹な声が降りかかって、佐久間は背筋を凍らせた。まずい。
「悪い子だな」
 わざとらしい言葉と、わざとらしい優しい口調で、耳元を濡らした源田が指先を佐久間の鎖骨に沿わせる。蛇が通るような感覚を味わいながら、その指が顎下を締め付けたのに絶望的な思いが甦る。顎下から再びゆっくりと落ちていき、首元を締め付ける源田は微笑み、佐久間の世界を収斂させていく。

「っ、ッっ!」
 足先を伸ばしながら、全身の筋肉を収縮させることによって、下腹部のしめつけも強くなる。ドクドクと、佐久間の苦しみが、悦びが源田に伝わって結合部を濡らしていく。

「ほんとうは、痛いのがすきなくせに」

 唾液を口の端から垂らして、生きようとする本能を見せる佐久間に、殊更優しいキスをした源田は、苦しみに酔いしれて頬を紅潮させ、甘い喘ぎ声を発している愛おしい恋人に、満足そうな笑みを浮かべるばかりであった。


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