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※性描写を含むので18歳以下は閲覧しないでください。



「本当にスゴいんだよ!」
 オーバーリアクションで動作を交えながら話すディランに目を向けながら、夕食を腹に納めていくマーク。感動をどうにかして伝えようと一生懸命な友人は、食べることも忘れてマークに向き合っていた。

「彼のフェラもとてもいいから……」
「巧いってことかい?ポルノ女優みたいに」
「それどころか、普通の女の子よりひどいものだけどね、でもすごく興奮しちゃうんだよ」
「よくわからないな」
 熱量があまりにも違って、なかなかついて行くことのできないマークは、そもそもディランが好き好んで男を抱いていることがまず理解できていないのだった。今までのディランの性的な交友遍歴は、可愛くても美人でも、とりあえず女に限られていた。童貞を捨てた日の体験を生々しく聞いたのを今は昔に思える。たしか、ずいぶん年上の女性とで、手取り足取り教えてもらったのはいいが、相手が性に奔放すぎて「すこしグロテスクだったよ」と笑っていたのだった。初めて見た女性器は興奮よりグロテスクさを感じたというのは、マークにも経験がある。デザートの苺にフォークを刺しながら、具合がよかった彼女たちのことを思い浮かべて性に不自由な現状に溜め息が出た。

「もちろん、彼とはアナルセックスなんだろう?」
「マークはしたことないのかい?」
「女の子のアナルにも興味がないよ」
「ミーも初めてだったよ。でも気持ちいいんだ、もしかしたらヴァギナよりいいかもしれない」
「それはさすがにないだろう」
「締め付けがすごいんだよ!がばがばのヴァギナはノーサンキューだろ?」
「汚くないのか?」
「マークはサクマのアナルを見たことないから言えるんだ!」
 ディランがなぜそこまで佐久間という日本人選手にこだわるのか分からないが、具合がいいというのは本当なのだろう。逆に、ここまで言わせる位の身体には興味が持てる。

「そうさ、だったらマークも試してみればいい!」
 顔を上げたマークは、アイガード越しにも、ディランの目が輝いているのがわかった。

「ミーたちは、何でも共有する、そうでしょう?」
 その意見に異を唱えるつもりはなかった。夜中、うまく宿舎を抜け出し、ディランが使う抜け道で日本宿舎に侵入する。鍵をかけ忘れた窓から入り込み、足音を忍ばせて目的の部屋に入ると、ベッドの上で彼は寝息をたてていた。いたずらっ子のように口元に立てた人差し指を当てたマークは、忍び足で近付いて彼の唇を奪った。ほどなくして異変に気付いたらしい佐久間が目を覚ますと、明らかに動揺し、挙げ句怯え始めた。いつもどんな抱き方をしているんだ、と呆れながら、近付いていくと、「見てて」と言い放ったディランが、上半身を上げた佐久間を抱きしめ、再び熱烈なキスをした。緩急をつけて、映画やドラマのような激しい口付けをすると、佐久間はついていけずに肩で息をし始める。何か言いたげではあるが、まるで言葉にならない。

「どうだいマーク。キスのテクニックでは、ミーのほうが勝ってるでしょ?」
「甘いな」
 場所を代わり、まさかという顔をしている佐久間を押さえ込むようにして唇を寄せる。日本人には刺激が強すぎるような、濃厚な口付けを送ると、佐久間はもう力が抜けきってしまう。ヒュウと口笛を吹いたディランは「さすがだね」と言い放ち、佐久間の衣服を剥ぎだした。「やめろ」「何を考えているんだ」と抵抗する彼をマークが押さえつけている間に、ディランは佐久間の下腹部を露わにした。屈辱に唇を噛んでいる佐久間を無視したまま、枕を腰の下にさし入れて脚をぐっと開くと、問題の場所がよく見えるようになる。佐久間の身体の柔らかさに感動しながら、マークはローションで濡れきった指をそのアナルへズブズブと挿入し始めた。こらえた悲鳴が僅かに聞こえ、口元を両手で塞ぐ佐久間に、まるで処女を無理矢理犯しているような背徳感が生まれる。

「交代だよ」
 ローションをマークの手に流したディランが今度は佐久間を押さえ、なおかつ何度もキスを繰り返す。鼻にかかったような、甘い声は少女のそれより心地がいい。嫌悪感などどこへやら、マークは彼の痴態を求めて、その場所を解していく。興味深く、観察するように覗き込みながら広げ、指を差し入れていくマークに、「なかで指を曲げてみて、たぶんここらへん」とディランが佐久間の下腹部を示す。何度か失敗したあとに、ポイントを見つけると佐久間の身体が大袈裟に跳ねる。可愛い、と思いながら緩急をつけて攻めると涙目になりながら彼は喘ぐ。

「もう十分だね。さあマーク、レッツチャレンジだ」
 佐久間の脚を抱え、折り重なるようにすると、彼がまさかというように最後の抵抗をする。擦りながら十分硬度を増したペニスをあてがう。アナルに挿れるなど考えられなかったはずなのに、もう興奮しきって仕方ない。

「マークのペニスはすごいから、覚悟してね、サクマ」
「……いくぞ」
 ねじ込むようにして、脈打つ内部に侵入していく。周りに吸いつく感触が何とも言えず気持ちがいい。ずっ、ずっと少しずつ腰を進め、根元まで埋め込むと、それだけで内部の締め付けがマークを追い詰める。

「どう?」
「ああ、挿れているだけでイきそうだよ」
「はははっ、さあサクマ、マークにしっかりご奉仕してくれよ」
 マークが動き始めると共に、ディランが佐久間のペニスを扱き始める。二重の刺激でびくんびくんと下半身を跳ねさせる佐久間はすでに息も絶え絶えだった。抽送を幾度も繰り返す度に余裕はなくなってくる。「いやっ」「やだっ」と抵抗する佐久間の、美しい痴態は、今まで関係をもった、性に奔放な女子たちとはまるで違う。熱い吐息を吐き出しながら、最奥まで入り込み、再び入り口まで戻して貫く。そうして生まれる反応に高揚しながら、佐久間をイかせてやる。エネルギーを使い切ったかのような彼に余裕を与えず動きを再開すると、泣き出しそうな声が上がる。容赦なく攻め、屈服させ、その悦びもあいまってマーク自身も果てる。ずるりとペニスを引き抜くと、彼のアナルは名残惜しげに口を開く。

「気持ち良かったかい?サクマ」
 ディランの言葉に、恨めしげな瞳で見返す佐久間は、それでも欲情を隠し切れてはいない。

「それじゃあ、今度はミーの番だよ」
 にっこりと笑うディランに目を剥いた佐久間。開きかけた唇をマークが口付けで塞ぎ、今度はディランが佐久間に折り重なる。

「ハマりそうだよ、ディラン」
「そうでしょマーク!」
 仲のよい笑みを浮かべる二人に、引きつった表情の佐久間が眉を寄せた。


2013/11/20
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