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※ちょっと成長させてしまっています。(佐久間高校生)
※R18作品ということで、十八歳未満の方はご遠慮下さいますようお願い致します。




 フットボールフロンティアが終わって、この曖昧な関係も終了したのだと、漠然ながら感じていた佐久間は、今の状況に半ば期待を持ち始めている自分を叱咤した。久々に会ったその人は相変わらず口数が少なく、考えていることが計り知れない。最初こそ苦手で仕方がなかったものの、今では愛おしささえ感じる。

「進学したんだそうだな」
「はい、附属高校に」
「サッカーは?」
「続けています」
「そうか」
「久遠さん」
 彼の走らす車に乗るのはこれが始めてのことだった。寮へ近付く毎に焦燥感が佐久間の背中を叩き続ける。制服のスラックスを握り、意を決したように噛んでいた唇を開く。

「俺、高校生になったんです」
「……」
「だから、帰さないでください」
 惨めな思いと、羞恥心と、諦観とがごちゃごちゃになっている。俯いていた佐久間の頭に手を乗せた久遠は、信号が青に変わると、ウインカーを点滅させた。

 何でもない日常だった。高校生になってから数ヶ月、代わり映えしない面々と顔を合わせながら過ごす日々は平坦に過ぎていく。午後の練習を終えたあと町に買い物に出ていた佐久間は、人通りの多い場所で、懐かしい顔に出会った。相変わらず大人しそうな彼女は後方を指差し、楽しそうに微笑んだ。その先を見遣った佐久間はドキリと胸を痛めた。

 久遠冬花は父から荷物を受け取ると、不思議そうにしている佐久間に事情を説明し出す。彼女はFFIから交流が続いている秋や春奈、夏未とこの連休を用いてお泊まり会をするのだという。記憶の彼女以上の饒舌さと、楽しそうな雰囲気に納得していると、時計を確認した冬花は慌てて佐久間に「行かなきゃ」と告げ、父と一言二言会話を交わし、小走りに町へ消えていった。残された佐久間は居心地が悪そうに視線を泳がせたが、サッカー部の面々に頼まれた買い物の大荷物を見遣った久遠の「送ろう」という言葉に頷いていた。

 いつだったか、久遠は佐久間に「お前は幼い」と口にしたことがある。それは尤もな事実であったが、佐久間にとっては耐え難い苦渋だった。戯れに唇を合わせても、そこには不確かな繋がりしか生まれなかった。歳の差というものは、歳を取る毎に縮まるものである。それでも当時の佐久間に隔たっていた歳の壁は、余りにも大きいものだった。

 佐久間の気質を知り尽くしている久遠は今更確認作業などしなかった。ただ、逃げようともしない佐久間の様子に、拒絶をしないことが最大限の優しさである。

 初めて拓かれる部分に、今まで感じたことのない感覚を味わって、羞恥心と共に動揺を強める。深爪された指、一本でも怖ろしい圧迫感にかられる。それでも次第に受け入れ体勢に入る体はまだどこか、幼さを残していた。元々体の柔らかい佐久間は、力を抜くことで大分調子が良くなってきた。増やされた指が容赦なく佐久間の内部をまさぐる。シーツに顔を埋めながら、恥ずかしそうに久遠を見上げれば、あやすような口付けを落とされた。大量の液体が内壁に絡んでくる。多くの時間をかけて広げた内部は、久遠を求めるように蠢いている。変わらず、中性的な美を保っている佐久間を汚すことは、普通の少女を汚す以上の背徳感を久遠の中に芽生えさせた。それを背負うことが何よりもの罪滅ぼしだと、美しい肢体へ手を伸ばす。きめ細やかな肌が欲情の色に染まっていく。初心な様子に時折、娼婦のような淫らな面が浮かんだ。

 何よりも、久遠に触れられ、秘部を露わにされているのだという事実が佐久間を追い詰めていた。身を委ねながら、出そうになる声を抑え、苦しげな呼吸を繰り返す。充分に解れきった入り口へ久遠のものが宛がわれる段になって、どうしようもない高鳴りが彼を支配した。指を絡ませながら、男を受け入れていく自分を意識する。

「ぐっぅ、ぁっ……」
 圧迫感に身を捩らせる佐久間の耳元に、久遠の低い声が届く。力を抜けという指示に上手く従うことが出来ない佐久間の唇が再び塞がれる。当時は圧倒されたままだった口付けに応えながら、萎えていた自身に触れられることで後方の力が抜けていく。その隙を突くように一気に入り込んだ異物感に目を見開く。

「っぁあ、っ」
 少し呼吸を置いて動きが再開される。ズブズブと、充分すぎる水音が後方から上がっている。不思議と痛みはない。久遠を受け入れている事実に体が悦びを示していた。次第に強くなる快感が、ある時跳ねるように強くなって、佐久間は口許から自分のものとは思えない声を聞いた。

「は、ぅん、…んっ……ああっ……」
 鼻に掛かったような、堪らない声に二人の興奮は高まっていく。

「くどう、さんっ……俺、なんか、っぁ!だ、っだめ、……」
 体感したことのない刺激に、混乱を覚えつつ、助けを求めるような言葉が放たれる。開かれた唇が必死に呼吸を繰り返している。寄せては返す高まりが、どんどん大きいものになっていく。

「いっ、あ、ああっ……ん、……あああ!!」
 泣き声のような、耐え難い淫声を上げながら、佐久間は久遠を締め付けていた。相変わらず触れられていた自身から零れ出た白液が久遠の手を濡らす。それでもまだ、後方の快楽は続いている。内部が久遠を求めてひくついているのが佐久間にも分かった。貪欲さに羞恥心を強めながら、強請るような視線を送る。意を汲んだ久遠が深く入り込む。
 結局久遠が果てるまでに、佐久間は三度もの絶頂を迎えていた。経験の差が大きいものの、それでも佐久間は、自分が久遠を一度でも満足させることが出来たことに喜びを感じていた。

 ぐったりとベッドに沈む佐久間を抱き寄せ、久遠が首筋を噛む。歳の差が何よりも障害となるこの人を、佐久間が想い続けるのは、時折見せる、こうした幼さがあるからである。大人よりも大人な彼のこの面を知るのは、世界で佐久間一人なのだ。この一時だけ、同じ場所に立てる。あやすように大きな体に手を回しながら、目を閉じると瞳の熱さが瞼に滲んだ。


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