2/14の失恋と、(@)




 私は源田君が大好きだ。入学したときからずっと見つめてきた。彼の視界に入るために、彼に気を止めてもらえるように、できる努力は全部した。彼の前を背筋を伸ばして横切ったり、声を少し大きくしてみたり。

 元々可愛いなんて褒めそやされていたけれども、そんなものは彼の前だと役にはたっていない気がしていた。だから本を読みあさって、雑誌を読みあさって、高価な基礎化粧品だって買い漁った。試せるものは何でも試したし、ダイエットだってしすぎないように調節しながら体重を維持した。友達なんて彼を手に入れるための駒に等しかった。それ程彼が好きだった。

 広げた伝から彼と知り合いになれて、話ができるようになって、私は天にも昇る気持ちだった。他の男と付き合って彼の気を引こうとしたけれども効果なんてなかった。私は先走りすぎたのだ。

 しばらくして彼に彼女ができた。憎かった。憎くて仕方なかった。呪い殺してしまいたかった。そこは、彼の隣は私の居場所なのに。しかし彼女は二週間と保たずに彼と別れた。最高のバカだと思った。そして最大のチャンスだとも思った。私は今の彼氏(源田君が傍に居ないことを少しでも晴らす目的で捕まえていただけ)とすぐに別れて彼の元へ向かった。けれどもその時には遅かった。また違う女が私の場所を横取りしていた。死ねばいい、あんな不細工。私の方が美人。私の方が彼を想っている。おこがましすぎるのよ、あんた。そんな怒りに我を忘れた。私の目にはいつもあの二人が映っていた。苛々した。今更仮初めの彼氏なんてつくる気分になれなかった。友達が慰めてくる、そのことにも苛々しだした。

 反面、悲劇のヒロインにでもなった気がした。このステージ、主役は私、それならば彼と最終的に結ばれるのはこの私なのだと。そんな敵愾心が爆発する前に、源田君は再び彼女と別れた。その事実を知った日に告白しに行った。もう待つのは嫌だった。手も足も震えた。馬鹿な男達が可愛いなんて言ってきても何一つ嬉しくなかった。誰からも認められなくても、私は彼が可愛いと言ってくれるのならそれだけでいいのだ。彼の前を通ったり、笑い合ったりするだけで幸福と渇望に揺れていた私が彼に想いを告げる!心音で言葉が聞こえなかった。だから彼が承諾してくれたことも、その一瞬理解ができなかった。



(恋に囚われ続ける美少女、その淀み)
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2010/2/14 Sun 00:07