イジワルな俺と、優しいアイツ/マルコ×ジャンルカ



 甘い顔をして微笑めばほら簡単!女の子なんてすぐ落ちる!さぁジャンルカ、やってごらんよ、できるものならね!





 落ち込んでいるジャンを見つけた俺は後ろから近付いていって、どぉん!と脅かすように飛びついてやった。けれど相手は無反応、挙げ句に溜め息なんてつくものだから、なんて失礼なんだと思考しては逆行した顔は笑みを浮かべていた。
「どーしたどーした」
「別に…‥」
「まぁた女の子に振られたの?」
「うるさい…‥」
 図星だと言っているかのような態度に、くすりと笑みを浮かべた。

「今度はどんな子?」
「……‥」
 ジャンは振り向き様、じとりとした視線を浴びせてきた。さすがに笑みを止めた俺は再び溜め息をついたジャンに見放されないようにしがみついた。

「綺麗な子だったよ」
「ふぅん」
「ブロンドヘアーで」
 手持ち無沙汰を解消するためか、ボールを磨き始めたジャンは、わざわざもう邪魔だとか言って俺を突き放したりしない。慣れっこになっているのだろう。律儀に振った相手の特徴を連ねていく。その図を脳内で作っていった俺はふと、思い当たる節に行き当たって目を細めた。

目の色はブルーで、
「瞳は綺麗なブルー」

背丈はジャンより数センチ低くて、
「背が小さくて可愛い」

巻き髪が特徴の、
「緩く髪を巻いた、女の子」

「あはは、残念だったね」
「殴るぞ」
「その子、絶対見る目ないって!」
「そ、うか?」
「そうだよ!俺が女の子だったら、絶対ジャンと付き合いたいし」
「喜んでいいのか、微妙な」
「喜んでよ!」
「はいはい、いい加減降りてくれ」
「ん?あ、ごめん」
 いつの間にかジャンに体重をかけていたことに気付いた俺は名残惜しくも両手を離した。温もりがどんどん消えていく。ああ、なんだか、泣きたい。

「俺も、女の子だったらマルコと付き合いたいかもな」

 満面の笑みで、彼がそんなことを言う。反則だ。真っ赤になった顔を隠すことに必死な俺は、ジャンの隣に座ってボールを磨き始めた。

「お前は!先に着替えろよ!」
 そう言われ、我に返った自分がまだ普段着だったことに気付く。急いでロッカーまで駆け寄り、不意に思い出して携帯を開く。
ブロンドでブルーの瞳の、少し背が低い、巻き髪が可愛い女の子と、バイバイするために。


 あの子もジャンも、ほんとうに、見る目がないや。

2010/9/9 Thu 02:36


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