竹くく



久々知家は古くから続く由緒正しい豆腐屋だ。
幾度となく戦争や不況も乗り越え随分昔から豆腐一筋の家系で育ってきた自分は家族の中でも特に豆腐と言う存在に魅了されてしまった。
もう私の豆腐への愛は止まらない。
だから、豆腐同好会を作って皆も豆腐への愛を深めよう!

「って、考えに…」
「至ったんだね」

始業式が始まる前のざわついた体育館。
2学期に入るなり、夏休みにした決意を友人の雷蔵にも話そうと、私は自分クラスの1-1の列から少し離れた雷蔵のいる1-6の列まで来ていた。
時間も無いので早口にどういった経緯で思い付いたのかを説明しすると先を読んで雷蔵が言葉を付け足したので「そうなの」と強く肯定した。
そしてやっと本題に入る。

「でもハチに言ったら同好会は5人以上じゃないと設立できないって言われて…」

夏休みに既に決意を告げた幼馴染み、ハチは学生手帳を見ながら確かにそう言った。
私とハチ、同好会設立には最低あと3人は必要と言うことになる。

「うん。わかった。じゃあ僕も同好会にはいるよ。図書委員会の仕事と…、あと文学部との兼部になるから毎日は参加できないかも知れないけど…いいよね?」
「ありがとう!!助かる!」

さすが雷蔵、話がわかる。
それに雷蔵なら私もハチも仲が良いので楽しくやっていけそう。
これであと2人。
そして、雷蔵が入ってくれるとなると…。

「雷蔵が入るなら私も入る!!」

突如背中から声が聞こえた。
振り返らなくても誰かはわかっている。

「そう言ってくれると思った。ホント三郎は雷蔵にべったりだね」

雷蔵の双子の弟、三郎。
もともと雷蔵は中学の時に私とハチが居た学校の転校生で、その転校の理由が雷蔵と三郎の両親の離婚らしい。
暫く離れていた時期があったからか、三郎はずっと兄である雷蔵にべったりだ。

「いいんだよ、私と雷蔵は生まれる前からもずっと一緒だったんだから」

そう言いながら三郎は雷蔵に抱きつく。
抱きつかれた雷蔵は嫌な顔1つしない。
本当にこの兄弟は仲が良い。
だが暫くして、雷蔵は思い出したように言う。

「そう言えば三郎、点呼の途中なんじゃないの?」

雷蔵は1-6のHR委員で、点呼はHR委員の仕事のうちに含まれている。
どうやら点呼中に私たちの会話を聞いて割り込んできたようだ。

「え、……あぁ、そうだった!ちぇ、また1から数え直しか…」
「頑張って」
「うん。そうだ、兵ちゃんももう戻らないとそろそろ…ほらあれ」

三郎が言い雷蔵が指を差す。
何かと振り向けばそこには我が親友にして1-1組のHR委員が息を切らしながらも器用に人を避けて走ってきた。

「勘ちゃん!!」
「やっぱりここにいた…。ちゃんと並んでくれないと私が困るんだけど…」
「ごめんね」
「ごめんはいいからさっさと並ぶ!!三郎もさっさと点呼終わらせなよ」

勘ちゃんは早口にそう言うと私の手をとり早歩きで来た道を戻ろうとする。
引っ張られるような形で双子に別れを言い、頑張って勘ちゃんに着いていく。

「ねぇ、勘ちゃん」

引っ張られながら名前を呼ぶと勘ちゃんは振り向かず「何?」とだけ応えた。

「勘ちゃんも入るよね?豆腐同好会」
「え…豆腐?」

私のいきなりの発言に勘ちゃんの足が止まり「何それ?」とでも言いたげの顔で振り返った。
そして次の瞬間、

『1-1!!1-6!!早く点呼を終えて報告しにきなさい!!!』

体育館中に、マイクがキーンと音をたてる程の1年生の学年主任である木下先生の怒声が響いた。

「あー!もう!なんでも入るから早く並んでよ!」
「うん!!」

これで5人。
その年から落乱高校に新たな同好会が加わった。








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -