(斉×中/北斗へ相互記念)



最近、BUS GAMEが途絶えている。
ゲームはいまだに緊張するし暴力は嫌いだし。
でもお金は必要だし。
GAMEがあって欲しいのか、なくて欲しいのか、まだ自分でもはっきりしないけど。
俺には必要なことってわかってる。
だからこれは少し困った状況だ。
……でもまぁ、そんなのはバイトもしてるし、GAME自体がなければこんな大金が入ることも無かったんだからって割りきれる。
けど…もう1つ。
もう1つ、なにより1番困るのは

『中条さんと会ってはいない』

ことだ。



俺は中条さんが好き。
中条さんは全然「好き」とかは言ってくれないけど…それでも、そんな俺を受け入れてくれた。
恋人って言う響きに浮かれたこともあった。
けど『NO NAME(名無し)』そんな俺たちの関係に新たな名前がついただけで実際の俺たちの関係は変わっていない。
不干渉であること。
AAAのチームであるかぎりそれだけは守らないといけないから。
結局、俺は中条さんの中に入っていけない。
正直、 淋しい と思う。

「……でね、ちょっとー!聞いてるの?」

放課後、家に帰ろうと校門前を歩いていると不意に聞こえてきた甲高い声。
見ると目の前にいたのは校内で有名なカップルだった。
工業高校で女子は珍しい。
だから女子特有の高い声が嫌でも耳に届いてしまう。

羨ましい。

純粋にそう思った。
別に毎日会いたいとは言わない。
あんな風に手を繋いで歩きたいとか贅沢も言わない。
でも、俺だって…。

「声くらいは聞きたいなー…」

誰に言うのでもなく呟いた。
そんなことを考えてる自分は女々しいのかもしれない。
でも、自慢にはならないけど、バカで足りない頭で考えたってどうにもならないのが事実で。
それどころか腹の虫まで鳴ってきて思考を邪魔する。
こんなときは……

「ラーメン食いに行こ…」



馴染みの店が見えてきた。
いつもと違うのは自分が制服ってことと、店に入ったところで誰も俺を待ってはいないこと。
それにしてもこの満楼店に来るのも久しぶりな気がする。
満楼店は作戦会議で使う店だ。
だからその作戦会議が開かれていない今は自然と足が遠退いていた。

「こんちはー」

ガラガラと立て付けの悪い扉を開ける。
そこには…

「鴇さん!中条さん!」

さっき"いない"と思ったばっかりの2人。

「……だよ、お前まで来たのかー?」

ずっと聞きたいと思っていたその不機嫌そうな声。
不機嫌そうな声を出していても実はそれほど嫌だとは思っていないことを最近学習した。
それなのに…、

なんか、違う。

漠然とそんな風に感じた。
それに俺自身もその不機嫌そうな声で「なんだー?」とか言われて、本気で落ち込むと「冗談だ」とかいって、いつもより少し優しくなる。
そんなのを期待していたはずだ。
それなのに中条さんの声が聞けたのが、会えたのが、全くといったら嘘になるけど……、

嬉しくない。

それは多分

「なん……で、なんで俺には全く連絡もくれないのに鴇さんと仲良くラーメン食べてるんスか!!!」

子供じみた嫉妬。

そんで俺はやっぱり子供だ。
思ったことを直ぐ口にする。
こんなこと言って2人を困らせたいわけじゃないのに。
口にしてから自分がどれだけ恥ずかしいことを言ってるのか理解した。
鴇さんはいきなりの事でポカンとしている。
中条さんも頭を押さえている。
恥ずかしい。
恥ずかしい。
恥ずかしい。
勝手に嫉妬して、好きな子を他人にとられ閑寂を起こした子供みたいに一人でキレて。
でも、やっぱり子供だから。
俺は「すいません」とたげ言い残してその場から逃げた。



逃げ出してしまった。
しかも逃げきれてしまった。
その事に後悔したのは家に帰ってすぐ。
時間も随分たってもう深夜にも近い時間なのに未だに後悔中だ。

せっかく中条さんに会えたのに。
きっと今ごろ怒ってるんだろうな。
次合うときどんな顔をすればいいんだよ。
どうして中条さんは鴇さんと一緒にいたんだよ。
どうして俺には電話もメールもくれないんだよ。

思うことは色々ある。

「あーもう!どうしろってんだよー!」

キレても意味のないこと。
けどお手上げ状態なのは確かでイライラが募り頭をかきむしる。 そんなとき、携帯がなった。

『中条さん』

ディスプレイに浮かぶ文字に困惑する。
出るべきか、出ないべきか。
正直、今電話に出ることは怖い。
が、出なくても後で怖い。
さらにいつまでもなり止まない着信音は俺に「出ろ、出ろ、」と言うように追い討ちをかけてくる。

もう、どうにでもなれ。

俺は携帯をとった。

「もしも…」
『おせぇよ』
「……すいません」
『っつーか寒い』
「……寒いって、中条さん今外ッスか?」
『まあな、……っつーか多分お前ん家の前』
「………え?」
『良いから窓開けろ』
「あ、はい!」
「よぉ、」
「中条さん!」
「でっかい声出すな餓鬼。近所迷惑だろーが」
「あ、すいません……。と、とりあえずあがってください」



あがってくださいって確かにそう言ったのは自分だけど、中条さんが俺の部屋にいる。
その事に酷く戸惑う。
だって、あんな事言って逃げてきたんだらか気まずくて。
でもゲーム以外の用事でこんな時間に一緒に過ごすことなんて滅多にないし。
あまつさえ中条さんが俺の部屋に……。
ここまで考えて回転の遅い脳からやっと疑問が浮かんだ。
当の中条さんはいつの間にか俺の隠していたエロ本を見事探しあて「うわ、ないわ」なんて言っている。

「中条さん、1つ聞いていいですか?」
「なんだ?」
「なんで俺ん家分かったんすか?」
「……聞きたいことってソレか?」
「……え?あ、はい。」
「そーだな…。その1、お前のいつもおりる駅。その2、電気屋。しかも高卒であと継ぐ云々言ってんだから個人営業だろ。その3、この2つに当てはまる電気屋の名前がサイトウ電気」
「あー…そう言えばそうっすね」
「……悪かったな」
「何が?」
「"お互いのことに干渉しない"俺が言い出したことなのにな」
「い、いえ!そんな…!!……俺の方こそすいません、その昼間…」
「別に。怒っちゃいねぇよ。ただ、てめぇの捨て犬みてぇな面が気になっただけだ」
「……捨て犬ってなんすか…」
「拗ねんな餓鬼」
「拗ねてないすよ!」
「拗ねてただろ。ってか嫉妬か」
「あのときは……拗ねてました」
「だろ?俺も拗ねてたしな」
「中条さんが!?」
「悪いかよ?」
「いえ、悪いってわけじゃ…ただ、イメージが…」
「なんだよ、イメージって。言っとくが俺はお前が思ってるほど大人じゃねーんだ」

中条さんが大人じゃない?
なら自分は何なんだ。
それになんで中条さんが?

「あの、」
「何で俺が拗ねてたか検討もつかねぇってか?」
「……はい」
「あーあ…これだからお子様は」
「お子様ってなんスかっ!お子様ってー」
「落ち着け」

そう言って俺を宥める中条さんはやっぱり大人で。
どこが大人じゃないって言うのかやっぱりわからない。

「あのな、お前はもう踏み込んできてもいいんだ」

唐突に予想もしない言葉を紡ぐ中条さん。
訳がわからず呆けていると中条さんはため息をついた。

「確かに、チームとしては不干渉と約束させたのは俺だ」

中条さんは続ける。

「けどな、斉藤。今の俺らはチームである前になんだ?」
「……恋人っすか?」
「ま、そんなもんだよな…」
「なんか改めて言うと照れますね」
「勝手に照れてろ。で、お前その恋人にほったらかしにされるってどーよ?」
「嫌っす!!」
「だろ?それなのにやっと会えたと思ったら何故か逃げ出された。ま、理由は分かりやすかったがな」
「……あ、」

そうか、中条さんは俺と同じ気持ちだったんだ。
俺と同じでずっと会いたいと思って思っててくれたんだ。
中条さんが好きだからゲームとか関係無く中条さんと会いたいって思ってた俺と……。
………好き、だから?
これは、都合のいい思い込みかも知れない。
でも、これって、きっと。

「それっ、中条さんが俺を好きってことですか?」
「……な…っ」
「どうなんですか?」
「……そうだよ、悪いか」
「いえ、ぜんぜん!!」



(そう言えばどうして昼間鴇さんと?)
(たまたま居合わせたんだよ、初めて満楼軒で出会っちまった時みたいに)



何ヵ月またせんだよって話ですよね。3ヶ月くらいやっけ?すいませんでした!






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