ドッペルゲンガーと言うものをご存知ですか? 世界には自分と同じ顔の人が3人はいて、3人と出逢うと死んでしまうというアレです。 僕達は謂わばそれなんでしょうね。
「じゃあ僕が残りの人に出逢って死んだら3分の1は貴方の所為ですね」 「あ…、そういう風にとりますか。ちなみに逆の立場で僕が死ぬことになっても貴方の所為なら本望ですよ」 「では、どんな風にとってほしかったんです?キモいこと言わないで下さい」 「そんな滅多に無いことなのに出逢えたのは運命だ、とかですかね?八戒さん、何気酷いですよ?」 「ははは…殴っていいですか?天蓬さんはウザいですよ?」
遠目に見ると僕たちは仲の良い兄弟が笑い合って会話してる様に見えているだろう。 けど実際は僕と彼、天蓬さんとは兄弟でも何でもないし、別に仲良くもない。 逆に僕は彼が苦手なくらいだ。 故に会話もさっきからこの調子で彼が一方的に好意を寄せている感じになっていた。 そもそも彼と出会ったのは親友のお兄さんに自分の親友が僕にソックリだとかで紹介されたのがきっかけだった。 それから何故だか彼は事ある毎に僕に「好き」だの「愛してる」だのと絡んでくるようになり、正直ウザい以外のなんでもなく本人に直接不満をぶつけることにした。
「何で貴重な休日に貴方なんかと歩かなきゃいけないんですか?」 「目的地が同じだから、じゃないてすか?」 「どうして貴方が僕と同じ日に悟浄の家に行くんです?」 「捲簾に呼ばれたんですよ。あとわざわざこの時間に出てきたのは僕の家の前を通りすぎる貴方が見えたからです」 「…ストーカーですか?訴えますよ?」 「ストーカーじゃなくて愛ですよ、愛」 「意味がわかりません」 「酷いなぁ…。僕はこんなに八戒さんが好きなのに」 「………はぁ、もういいです」
嫌みをたっぷり含めた言葉にも彼は平然とし、わざとらしいため息にも動じることなく笑顔を絶やさない。 それが僕のペースをただただ崩していくだけで、…気に食わない。
「髪、見ていて暑いんですが」 「でもコレ切っちゃったら僕たちホントに見分けつきませんよ?まぁ、それもいいかも知れませんが」 「……そのままでいいです」
何回も言うようだが僕らは髪の長さ以外の外見が本当にそっくりだ。 だから彼を見ていると昔の自分を思い出す。 髪を伸ばしていた頃の自分を。 愛する人を救えなかった無力な自分を。 その事もあり僕は彼が苦手なんだ。
「……天蓬さん、貴方ナルシストなんじゃないですか?」 「そんなことないですよ。僕は貴方の性格、貴方と言う存在に惹かれたんです。人間中身だって言うじゃないですか?」 「それは、そうですけど…」
確かに天蓬さんは何処か堕落しているところもあり僕らの性格は似ているとは言い難い。 けど第一印象からして気に食わなかった相手に良い所を見せようとしているわけではないので、中身に惹かれる要素がわからない。 それに…、
「それでも僕は…」 「僕が嫌い、ですか?」 「……はい」
ただ、無茶苦茶に僕のペースを壊して。 無茶苦茶に僕の心を乱して。 今まで忘れかけていた感情を呼び戻して。 記憶を呼び戻して。 たった一言でイライラさせて。 ドキドキさせて。 それに戸惑ってる自分がいて。 それを許しかけてる自分がいて。 そんな自分を許せない自分がいて。 彼を嫌いなはずの自分がいて。 彼を好きになりかけてる自分がいて。
だから僕は貴方が…、
「……嫌いです」
このまま彼を好きになると昔の自分を許してしまいそうだから。
(支離滅裂な文でごめんなさいっ) (これからもヨロシク☆)
|