古い記憶の


ついった文字数でのオリまに短文詰め
とは言ってもそんなにありませんが。キャラも片寄ってますぜ旦那ァへっへっへ
古いものを引っ張り出してきました
記憶の欠片をおひとつどうぞ

╋╋╋

【家鴨と雨彦】

「重いでしょ、持つよ。資料室に運べばいい?」返事をする前に抱えていた資料を横から持っていったこの野郎。里の男にしては珍しく雑用仕事を真面目にこなしている。全部持っていくのではなく少しウチの手元に残しておく気遣い。いけすかない。「副頭領のとこだ暇人野郎」一言の反抗を。


【塵芥虫と幽霊】

こんなにも寝苦しい夜なのに心が寒いのはきっとここ数日人と会っていないからだ、と目の前の男は云う。友人たる僕を目の前によくそんな事が言えるな。「だってそちらさんは生きてないかもしれない。私は生きているのだから生あるものと触れ合いたいかもしれない」おぉ、いっそ死ねよ。


【閻魔と袋貂】

西瓜を切って目の前に差し出せば首を傾げ不思議そうな目を向けてくる。「食べてもよいのだぞ袋貂」そう伝えると外側の皮を食べ始めたものだから内側を食すよう促す。恐る恐る食し西瓜の味に歓喜する袋貂の一部始終を眺め、教えることの多さを実感する。使える手駒になる日は、まだ遠い。


【家鴨】

「うふふ、お腹空いたねぇ」目の前に居る食い意地の張った野郎は呑気に言った。「やあ、家鴨君。腕の一本でもくれると嬉しいねぇ、指でもいいから先っちょだけだから」巫山戯るな。今朝運んだ飯を器ごと食いやがって。何回目だと思ってんだ!盆で頭を叩いてやれば、遅れて痛いと声がした。


【家鴨】

「毎度、すみません」辛うじて残っていた隅に転がる箸を回収する。が、落としてしまった。野郎…急に交代するんじゃない、吃驚するだろうが。再度箸を拾おうと手を伸ばした先に溶け切った蝋燭が目に入る。替えたばかりだろうと聞けば、つい夜中まで読書を、とのこと。二度目の盆が空を舞う。


【家鴨】

目の前で頭を抱えている男を見てハッと我にかえる。鳴呼まただ。またやり過ぎた。ウチの悪い癖だ。口も手も出る悪い癖だ、本当に嫌になる。「す、」すまない、謝罪しようとそちらを向けば「ぎゃははァ!」と耳障りな笑い声。「す、すっこんでろ!」予定とは違う言葉と三度目の盆が頭を捉えた。


【幽霊】

後脚を怪我した猫を保護した。私から逃れたいのか、這いずってでも距離を取ろうとする。寂しくはある。が、それよりも何か食べさせなければ。見るからに弱っている。そう思い食べ物を持って戻ってくれば、開け放したままの段差のある戸から落下し息絶えていた。そんなにも。そんなにも私が。


【蒼猫】

目の前の嫁どのを見る。茶を冷ましながらゆっくり飲んでいた。何となしに呼びかけ思い切り変な顔をしてやれば、口に含んでいた茶を盛大に噴き出し噎せ返った。茶に濡れたにも構わず指差し笑えば、楽しいですかと冷たい声。興奮すると応えれば、顔の真横を風車が掠める様に飛んで行った。


【翠猫】

親譲りならぬ一族譲りの猫舌が為、熱い茶を飲むのに苦戦させられるのは毎度のこと。飲めるほど冷ましたところでやっと一口啜る。ふいに名を呼ばれ、其方を向けば婿殿の変な顔。折角飲めた一口を盛大に噴き出し、楽しいですかと冷たく聞けば興奮すると言うのだから、この男、と風車を投げた。


【化猫】

俺は悪くないけど俺のせいでもある。でもそれは君と俺の運が悪かったのだ。君は不運だったし俺も運が悪かった。それが何か?ただそこに何も起こらず起こさず不動でいられることの何と贅沢なことか。わかるかい、俺はそれすらも叶わない。それが何か?俺は不運なだけで君の運が良かっただけだ。


【大王】

吾の愛する大事な一人息子の閻魔ちゃまが、紹介したい人が居ると女を連れて来たなどと。眩暈がしたものだわ。駄目よ駄目駄目その女は駄目よ閻魔ちゃま吾は認めない許さない受け入れないわ絶対に駄目よ。女の勘は当たるの。鳴呼この女、早く始末しなければ。閻魔ちゃまが毒されてしまう。


【閻魔】

紹介したい人が居ると母上の元へ親しくしている女を連れていけば、一目見た途端拒絶の言葉が飛んできた。耳を劈く程声を荒げ、衣服が乱れるもお構いなしに頭を抱え発狂している。この様に荒ぶる母上は初めてみた。彼の女ともう既に一晩を共にしたなどと今の母上に告げる度胸は流石になかった。


【壱號】

従弟である彼を見ていると、感情の起伏が激しいのは忍びとしてどうかと思うことがある。が、実のところ自分からすれば少し羨ましい気持ちもあるのだ。何の努力も意識もせず極自然に当たり前に呼吸するかの如く感情を動かせる、意図的にせずとも、考えずとも。それが負の感情であろうとも。


【蒼猫】

やってしまった。口から泡を吹き白目を剥いて気を失っている嫁どのを風呂場から運び出し、身なりを整えて横たわらせる。背を流すことを口実に風呂場に入り、頭を押さえつけ湯槽に沈めてやったのだ。俺が。予想以上に興奮してついやり過ぎてしまった。水に沈む嫁どのが可愛いから仕方が無い。


【壱と参と惨】

「お前を含めた“自分ら”を一番殺してきたのはお前だろう?」慈愛に満ちた表情とも憎悪に塗れた表情ともどちらとも取れ、どちらとも取れない、自分と同じ顔が言う。「そうだな」どの感情も見て取れない表情で同じ顔の自分が言う。自分は自分を殺し過ぎている。何でも無いことだろう?


【塵芥虫】

どうして皆無視するの、と嗚咽を漏らし一人で泣いていた頃の面影が欠片も残って無いな。目の前の男の過去と現在を頭の中で比べてみる。どうしてこんなにも気持ち悪くなってしまったのか。目覚めなくていいから目を覚ませ。今の君の片思いは過多思いで片重いすぎて、昔より見てられないんだ。


【幽霊】

「そちらさんは変わらないかもしれない」「そりゃそうですがな。僕はお化けさんなんだから」幼い頃に出逢って以来、何ひとつ変わることなく存在し続けている目の前の友人。日々の変化を望む自分の中で、唯一変化を望まないもの。「そのままでいいかもしれない」「そうかい、君は目を覚ませな」


【塵芥虫】

あんなにも生きとし生けるものに過多思いしているというのに、彼は恋というものをしたことがない。寧ろ愛というものを理解していない。それもその筈だ。愛されたことのない彼がどうして真っ当な愛情を育めるというのだろうか。恋以前の問題である。せめて初恋の一つや二つ経験してくれれば。


【幽霊】

確かに世の中には愛という感情があることは認知している。が、私自身が実感し認識したことがないのだから理解するには中々難しいものがある。好意の延長線上にあるらしいのだが、そもそも初恋というものも経験したことがない私は何処から何処までが好意で愛なのか分かるはずもなかった。鳴呼。


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また古いメモでも見付けたらちょこちょこ載せていきますよ、と

暫しの別れを
御機嫌よう

2016/06/09 06:11



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