『なぁ、今日のバイト、休めないのか?』

「はっ?」

朝、目覚まし時計より少し目が覚めて、隣にいるカイジを起こさないようにそうっと布団から抜け出す。
簡単な朝ご飯を準備していたら、珍しく目が覚めたのか寝ぼけ眼のカイジが腰に腕を回してきた。

『昨日も一昨日もだったじゃん』

「今この家計を支えてるのは私ですよね?」

何をバカなことを言っているんだこいつは。
週4でコンビニバイト、週2で雀荘。月2でカジノのバイトをしていてもなお、家計は微妙な位置にあるのに、なんなんだ本当に。

『俺もアホ言ってるのは分かる』

腰の腕に力が籠もる。心なしか若干声が上擦っている。もしかして…。

「カイジ、嫌な夢みたんでしょ?」

肩が小さく揺れた。ビンゴ。
こうなるとテコでも離してはくれないカイジにため息がでる。

『いや、うん。なまえには凄い迷惑かk「…ちょっと黙ってて」

パチパチと携帯を操作して、今日はコンビニのバイトだから融通が利く。本当に良かった。

「本当にごめんなさい。はい…はい。明日はちゃんと行きますので」

失礼しますと電話を切り、何時までもグズグズやっているカイジを引っ剥がしベッドへとダイブする。

『なまえ…』

「まだ早いから寝よう」

なまえ…なまえ…とうわ言のように名前を呼びながら胸に顔を埋め、グズグズ泣くカイジをあやす。
自分より一回りも大きな彼を抱っこするのは大変だけど、彼の痛みに比べたら何てことはない。

「おやすみ」

だんだんとすすり泣く音が消えてゆく。
泣き虫の彼が夢で泣かぬようにと、額に振れるだけのキスを落とした。

【クライベイビー】