*やっぱり病んでます*


彼と付き合うようになってから、傷の手当てだけは上手くなったような気がする。それと、心なしか体力もついた。

『なまえ?どこにいるの?』

上から声が振ってくる。どこにいるもなにも、四つん這いにさせられて背中に乗られているので、下にいるよと答えざるえない。

『どうしてそんなところにいるんだい?』

君が散々泣き喚いた挙げ句、誠心誠意真心を込めて尽くせと言われて、椅子になっているんじゃないかと心の中だけで悪態をついた。

『ねぇなまえ?』

答えたいけれど、口に猿ぐつわをされているので答えられない。返答がないのにキレた零が、ゆったりとした手付きで猿ぐつわを取り去った。瞬間。

「うぐぁっ」

『人の話はきちんと聞かなきゃ駄目だよなまえ』

綺麗に下から蹴り上げられた。
胃液がせり上がるが吐かないように勤める。でないと二発三発と続けられてしまうからだ。

「ぜ…ろ……」

『どうしてなまえは学習をしないの?成績はあんなに良いのに』

そう言いながら今度はおもむろに首を絞められた。怒られる理由が見当たらないから困るが、大方、道を聞かれたとか、電車で席を譲ったとかそんなもん。

「ご…め…ん……ね」

朦朧とする意識の中で謝罪を述べれば、ポロポロと涙を流す零が目に入る。毎回毎回泣くくらいなら止めればいいのに。なんてことは絶対に言わない。

『なまえ…なまえ……』

「どこにも行かないよ、私には零しか居ないんだから」

ガリリと首筋を噛まれ、流れ出る私の血を啜る零を両腕で抱きしめながら、このまま溶けて一つになれれば楽なのになぁと呟いた。

(なまえの血は甘いよね)
(零の涙はしょっぱいよ)


【個体だから仕方ない】