バイトの帰りがけにカイジくんを見かけたので声をかけようとしたら、隣にインパクトのある女の子がいたために自粛。てかなに?カイジくん彼女居ないって言ってたじゃん。

「さはらー」

『わかりました、わかりましたから』

正直自分の方が可愛い自信がある。しかし、しかしだ、カイジくんはその女の子と仲睦まじげに腕なんぞを組んでいたのだ。
悔しいのと悲しいのとが入り混じり、気が付けばなぜか同じバイト仲間の佐原のところにいた。

「くっ…ひっく…」

『あぁもう、泣かないで下さいよ』

バスタオルを渡されてメイクがぐちゃぐちゃになるのも無視してゴシゴシと顔を拭う。

『なまえさんならもっと素敵な人が似合いますって!』

背中をぽんぽんされながら一生懸命慰めてくれる佐原。やめてよ、と伝えれば泣いてる時はこれが一番効くんですよ!と真顔で言われた。なんだよこいつ、結構優しいじゃんか。

『ってゆーか、なんでカイジさんなんですか?』

「ふぇ?」

『あんな人やめて俺にしましょうよ!』

「えっ?」

思わず涙が引っ込んだ。
涙でぼやけた視界をクリアにして、きちんと向き合ったら耳まで真っ赤にした佐原が再度、俺と付き合って下さいと申し出てきた。

(私、失恋ほやほやなんだけど)
(俺に任せて下さいって!)


【時として急速に加速する】