散々上司にバカにされ、お局には嫌みを言われ、最悪なことにヒールが取れるという三重苦が重なったとこに君はやってきた。

『…なにシケた面してんの?』

別に迎えに来てなんて頼んでないのに。彼は私が本当に辛い時にふらりとやってくる。

「呼んでない」

タバコをふかしながら確かに呼ばれてないなと言われた。そもそもなぜ彼が私の職場と退社時間を知っているのだろうか…。

『前にここから出てくるのを見かけたんだ』

「…アカギくんってエスパー?それともストーカー?」

なんでそうなるのさと笑われた。そして全部表情に出てるよ、と言われてびっくり。(確かに出やすい方だけどさ)
2本目のタバコに火を付けながらアカギくんは貸しなよと手を差し伸べてきた。

「?」

『あんた、鈍いって言われるだろ』

手、貸してと言われてようやくその差し伸べられた手の意味を理解し、おずおずと差し出す。

『…ねぇなまえさん』

「なぁに?」

てろてろと、私の歩幅に合わせてゆったりとあるくアカギくんは急に立ち止まると思いきや、グィと腕を引かれ、そのまま抱きしめられてしまった。えっ?なに?どゆこと?

「アカギくん?アカギさーん?」

『好き』

ちゅっ。

「!?」

人気のない路地裏で突然の告白と唐突のキス。
アカギくんは元気出た?と言ってニヤリと笑った。


(アカギくんはずるい)
(素直に言わないあんたもね)

【私のヒーロー】