トントントントン。
規則正しい包丁の音とシュンシュンというお鍋の音。
始めちょろちょろ中パッパ。
夕げの支度を半ばまで終え、あとは味噌汁を作り、炊き上がったご飯を蒸らすくらいかという時に君は帰ってきた。

『ただいま』

学生服に身を包み、学校に行っているんだか居ないんだか分からない、やたら中身の少ない鞄を肩から外し、疲れたと言いながら靴を脱ぐ。
手を洗うように促せば面倒くそうに学ランを脱ぎ捨て畳へ寝そべる。

「こら、しっかり手洗いうがい。あと制服の脱ぎっ『ぱなしはダメでしょ!でしょ?』

渋々洗面台へ向かう。
ワイシャツを洗濯カゴにいれ、ズボンも学ランと同じハンガーにかける。

部屋着に着替えながら台所を覗くしげるに、今日の夕飯は煮物とおひたしとあと漬け物ですよ〜と答えて見やれば、案の定もの凄い嫌そうな顔をみせる。

『育ち盛りなんだけど』

「…我慢しようぜ」

身長が伸びなかったらなまえさんのせいだとかなんとか言いながらラジオのスイッチへと手を伸ばす。
適当に流していたら聞いたことのある音楽と共に微妙な鼻歌が聞こえてきた。

「〜♪」

『下手くそ』

機嫌良く歌っているところをぶった切ってお茶碗にご飯をよそる。ちゃぶ台に向かい合わせで座り、明日の休日は買い物に行こうかと伝えた。


【昭和的日常】