頭上には青い空。昨日の雨天のせいだろうか。やけに青く見える。
足元では列を成した蟻が巣穴を目指して歩いていた。
「……。」
蟻は小石を上って下りていく。
「……。」
最後の一匹もやはり上って下りた。
「……。」
列が視界から消え、卯月は立ち上がった。
今日の探索はこれで終いだ。
「……。」
視線を反らせばまだ蟻の列は移動しているが、追う必要もなければ理由もない。
「……白蛇。」
蟻の列に背を向け神社の入口へと駆ける。
「……。」
階段に腰を掛けて、空を見上げた。
雲一つない空は一羽の鳥も飛んでいないため、静かなものだ。白蛇はまだ来ない。
「……。」
まだ、来ない。
「!」
視線の先に影が落ちた。
「……。」
影の主は悠々とその場に居座った。
もちろん白蛇ではない。それよりも小さい主はその身を丸める。
「……ダメ。」
卯月は何とかその主を遠ざけようと声を上げた。
そこに居座られると困るのだ。しかし相手はこちらを一瞥しただけで、関係ないと言わんばかりにその目を伏せてしまった。
「……。」
大変困ったことになってしまった。
「……。」
同時に少々腹立たしい。
とは言え、そこに居座られて困るのは事実であり、自分の力ではどうしようもないこともまた事実である。
「ダメなのに……。」
卯月は不満を呟くと一度主に背を向けた。
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