三千世界を射た者 | ナノ


01

 頭上には青い空。昨日の雨天のせいだろうか。やけに青く見える。
 足元では列を成した蟻が巣穴を目指して歩いていた。

「……。」


 蟻は小石を上って下りていく。


「……。」


 最後の一匹もやはり上って下りた。


「……。」


 列が視界から消え、卯月は立ち上がった。

 今日の探索はこれで終いだ。


「……。」


 視線を反らせばまだ蟻の列は移動しているが、追う必要もなければ理由もない。


「……白蛇。」


 蟻の列に背を向け神社の入口へと駆ける。


「……。」


 階段に腰を掛けて、空を見上げた。

 雲一つない空は一羽の鳥も飛んでいないため、静かなものだ。白蛇はまだ来ない。


「……。」


 まだ、来ない。


「!」


 視線の先に影が落ちた。


「……。」


 影の主は悠々とその場に居座った。

 もちろん白蛇ではない。それよりも小さい主はその身を丸める。


「……ダメ。」


 卯月は何とかその主を遠ざけようと声を上げた。

 そこに居座られると困るのだ。しかし相手はこちらを一瞥しただけで、関係ないと言わんばかりにその目を伏せてしまった。


「……。」


 大変困ったことになってしまった。


「……。」


 同時に少々腹立たしい。

 とは言え、そこに居座られて困るのは事実であり、自分の力ではどうしようもないこともまた事実である。


「ダメなのに……。」


 卯月は不満を呟くと一度主に背を向けた。


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