頬に水滴が落ちた。
雨だったら嫌だな、なんて思っていると突然体が浮き上がった。さすがに落ちてしまうのは困るため丑は渋々目を開けた。
「……焔戌?」
「あ、悪い。起こした?」
「冷たい。」
目の前には焔戌の顔があった。
「髪濡れたままだったんだ、忘れてた。いやー、淘午のアレに巻き込まれちゃって……。」
「服は?」
「着替え済み。」
先程の音は寅雷と淘午が起こしたものらしい。
本人はとばっちりだと言っているが、どうせ何か口を出したのだろう。淘午は力の加減が上手いのだから手違いで巻き込むはずがない。
「起こしたー……。」
「ごめんって。」
「馬鹿ー……。」
「ほら、動かない。」
腕の中を転がろうとすると抑えられてしまった。何だか少し窮屈だ。
でも、少し温かい。
「……。」
寝て起きて、そしてまた眠る。
繰り返し続けて、もう何年になるのだろうか。少しずつ違ってはいるけれど、何も知らない他人が見ればこの社の住人はただただ繰り返しの中を生きているだけに過ぎない。
「んぐっ!?」
「……。」
徐に焔戌の顔に触れてみた。
「ちょ、落とす落とす!」
「……。」
特に何もなかった。
いつもと同じ。似たような反応。似たような結果。同じことの繰り返し。
「……焔戌。」
「ん?」
「……。」
それでも。そう考えて、丑はそっと目を閉じた。
「……おやすみ。」
「おやすみ、丑。」