もう限界だと目を閉じると柔らかな風が頬を撫でた。
「……ん。」
「起こしたか。いや、すまぬ。されど風邪を引かせるわけにもいかぬ故……。」
「……ありがと。」
少しだけ目を開くと龍懿が居た。
着ていた上着を肩に掛けてくれたらしい。日差しのせいか少し暑くも感じるが、それも眠るまでの間だろう。
「龍懿さん、こちらに……。あら?丑さん、今日は此処でお昼寝ですか?」
「未斗……?」
「ごめんなさい。起こしてしまいましたね。」
今度は未斗だった。
「未斗、何か用があったのであろ?」
「そうでした。実は卯月を探していて……。」
「白蛇のところでなければ、散策に出掛けたか……。我も共に行くとしよう。」
「お願いします。」
「……。」
二人の会話が頭上で流れて行く。
眠気さえなければ手伝ってもいいのだが、やはり眠い。あと面倒臭い。
「焔戌に迎えを頼むとしよう。好きなだけ眠れ。」
「……ん?」
「いや、気にするな。」
「……?」
龍懿の言葉が上手く聞き取れない。
目を擦って眠気を払おうとすると、その手を掴まれそっと下ろされた。眠っていいということなのだろう。龍懿がいいと言うなら淘午だって許してくれるはずだ。
「参ろうか。」
「えぇ。」
「いっ、て……。」
『?』
「いって、ら、っしゃ……ぃ。」
何とか言い切った。
甘い香りは未斗が何かしてくれたのだろう。尚更眠くなってしまった。遠くで大きな音がした気もするがもう限界で、丑はそっと目を閉じた。