dusk. | ナノ




休日のデパ地下は大層な混雑ぶりで、あれこれ見て回るうちあっという間に人に酔ってしまった。
情けないとは思いつつもエスカレーター脇の休憩スペースにお世話になり、試飲に勧められた玉露を手に嘆息する。

「…困った」

市川への手土産を探している。
先週の窓を割った件で、市川の話通り数日後には近所の工務店から請求書が届いたのだが、
さて窓ガラスとは一体いくらするものなのかと恐る恐る確認した金額は月の携帯電話の使用料より安く、その半分程度の物だった。
ガラスの相場は分からないが、いくらなんでも安すぎやしないか。しかも内訳に示された修繕作業の内容によれば、結局ガラスは戸一枚分まるまる付け替えたらしい。
古そうな家だったから、実際に割れた所以外にもダメージがあったのだろう。それでこの額に収まる訳がない。
一桁間違えているのかもしれないと工務店へ問い合わせると、電話口に出たいかにも大工らしく威勢のいい男はこちらの話をカラカラと笑い飛ばした。
詳しい金額は教えてもらえなかったが、やはり実際の費用はもっとかかっているらしい。窓を直したその場で請求金額を伝えると、市川はほぼ全額をすぐに寄越したそうだ。

『札を放って寄越してよ、端数は向こう…つまりアンタだな、に請求しとけってさ。何かとかっこいいんだあそこのじいさんは。なに、年長者の厚意にはありがたく甘えときゃいいんだよ、ここで無理に払おうって方が野暮ってもんだ。どうしてもってんなら、菓子折り持って礼でも言ってきな』

外見の割に気のいい男のようだとは思ったが、まさかここまで親切にされるとは予想外だった。
大工に言われた通りここで無理に全額払うと言い張るのは無粋だろうが、黙って甘えるわけにもいかない。結局はこれも言われた通り、再度市川宅を訪ねて改めての詫びと礼をするしかないようだ。
そう思って今日訪ねる前に、こうして手土産を探しに来たのだが。

「市川さんが何が好きかとか、工務店の人に聞けばよかった…なんか仲良さそうだったし」

菓子折りと一言で言っても、市川の好みを全く知らないとなると選ぶのは難しい。
気合いを入れてデパートまで足を運んだのも災いした。目の前に広がるフロアにはそれはもう豊富に品々が並び、目移りするばかりでおおよそのジャンルを絞り込む事すらままならない。

「甘いの嫌いかも…いやでも、そしたらしょっぱい物ってなんだ、おせんべ?…お年寄りに硬い物?気にし過ぎかな、お酒飲むみたいだったからおつまみ系…これも好みがあるよなぁ」

同じような事で迷っては頭を抱えてを、もう何度も繰り返している。
相手の好みをどんぴしゃ当てる必要は無いのだが、親や上司よりも年上で好みも分からない相手に、詫び兼礼として妥当な物とはなんだろうか。

「…そもそも食べ物である必要は無いのかも…あ、いや駄目だ、これ以上選択肢を広げるのは駄目だ」
「だぁからぁ、グダグダ悩んでてもしょうがないじゃないッスか!」
「?」

まるで自分が諭されているような言葉に顔を上げると、目の前のエスカレーターからキャッキャと騒々しい声が降りてきた。

「ガッといっちゃいましょうしょガッと!」
「馬鹿言うなっ何の策も無くそんな簡単に行けるかよっ…!」
「そもそも、取っておいてくれてるのかも分からないしな」
「捨てられてるのに真っ向から乗り込んでも、いいこと何にも無いよねぇ、事前に中の様子を探れたらいいんだけど」

この間の少年達だ。
部活動か何かの帰りだろうか、相変わらず眩い制服姿は休日のデパ地下では少々浮いて見えるが、本人達はそんな事は少しも気にしていない様子でしきりにお喋りを続けている。

「じゃあもういっそ、ボール回収は諦めちゃいます?」
「えっ、そ、そんなのアリなのか」

金髪の少年の思いつきに、長髪の少年がぎょっとして応えた。不良の見本のようなあの頭は、学校で怒られたりしないのだろうか。
前に見た時は確か金髪が後輩で長髪の方を先輩と呼んでいたと思ったが、なんだか頼り無さそうな先輩だ。
しかし後輩は随分懐いているようで、その先輩のまわりをちょろちょろと楽しそうにまとわりついている。

「駄目だ、野球部からの借り物だぞ。何にもしないで諦めるんじゃ筋が通らない」
「あはは、カイジさん今ちょっとそれもいいなって思ったでしょう」

短髪の、ここからは見えないが顔の半分に大きな火傷らしき痕のあった少年。その子供らしからぬ鋭い目つきに睨まれて、先の二人はうぅと唸って黙り込んだ。
そのやりとりを見て笑うもう一人の少年は、他三人と比べてきっちりと制服を着こなし、穏やかな口調からしていかにも優等生、という体である。

「…、って、あ、まずい見失う」

突然の邂逅についぼんやりと彼らのやりとりを眺めるうちに、その背中が人込みに紛れて見えなくなっていく。
慌てて持っていたお茶を飲み干し追いかけた。彼らとまた会う事があれば伝えるようにと、市川から預かった伝言がある。
少し先を行く四人の背を追う。声をかければいいのだろうが、何と呼べばいいのだろう。ほんの一時顔を合わせただけの、本来なら全く縁の無い少年達だ。
忘れられているかもしれないし、覚えていたとしても、下手に呼び止めたらまた逃げられるのではないか。
人混みの向こうに見え隠れする横顔の幼さに妙に気後れしてしまうが、悩んでいるうちに最後尾を歩く一人に追いついてしまった。

「ま、待って!」

ともかく前回のように、不意を突かれて逃がしてはならない。短く声をかけると同時に、用心のために手首を捕まえる。

「っ?…あ!あんた…!」
「…こんにちは」

当然ながら捕まえた少年は驚いて振り返った。長髪の、先輩と呼ばれていた少年だ。さっきはカイジとも呼ばれていたか。
改めて見ると、片頬に大きな向こう傷がある。喧嘩だろうか、刃物の傷に見えるが。印象より根性のある不良なのかもしれない。

「なん、なんであんた」
「みょうじです。あなたはえぇと、カイジ君、だよね?ちょっとこないだのことで話があるんだけど」
「話…、え?なんでオレの名前、…え!?逮捕!?」
「…」

その傷はシールか何かか。
声には出さずつっこみながら、勝手な妄想でみるみるぐにゃりと泣き顔になるカイジの顔を眺める。
どう宥めたものか戸惑っていると、先を歩いていた三人が異変に気付いたらしく引き返してきた。

「カイジさん、どうかし…あ」
「あれ?カイジさん誰スかその人」
「あぁホラ、この前の人だよ、ボールの。カイジさん、知り合いだったんですか?」
「…っ」

数歩先でこちらの様子を窺う三人に、カイジカイジと呼ばれてカイジ少年が涙目で視線を送る。助けを求めるつもりだろうか。あんまり騒がれると恥ずかしいのだが。
足下に視線を落としごしごしと目元を拭うと、カイジは意を決したように再び三人がいた方へ向き直った。いた方へ。

「〜っお前ら、オレに構わず逃げ…てる!いねぇ!!」
「…」

先輩の数秒の逡巡を待たず、後輩達三人は迅速な判断で脱兎のごとくその場を離れて行った。
捕まえたカイジを片手に身動きが取れず、成す術無く一部始終を見守るこちらに、優等生風の少年は会釈までしていった。あれは礼儀正しいと言っていいものか。

「言われる前から逃げるヤツがあるかよっ…!」

捕まっている本人も仲間を逃がす気ではあったようだが、それにしたって順序という物がある。がっくりと項垂れる様子はなんとも気の毒だ。

「…えぇと」
「! なん、だよ」
「そ、そんなに怯えないでよ」

声をかけるなりびくりと肩を震わせこちらを振り返るカイジ。まずはこの怯えきった状態をどうにかしなくては話にならない。
往来の真ん中では都合が悪いので、カチカチに硬直している少年の手をひき、フロアの隅にある階段前まで移動した。
少し人混みから離れるだけで随分静かになるもので、実際よりも遠く聞こえる喧噪を背に改めてカイジの顔を覗き込む。

「…まず、逮捕とかお説教とか、そういう話がしたいんじゃないからね?」
「え、そっそうなのか?」
「そう。今日は買物に来てて、偶然君達を見かけたの。いきなり名前を呼んで悪かったけど、他の子に呼ばれてるのが聞こえたから」
「お…おお、なんだ…そういうことか…」

カイジの固く身構えていた肩から力が抜けていくのが分かる。案外に素直に人の話を聞いてくれるようなので、さらに話を続けた。

「で、聞こえた話だとボールを返して欲しいんでしょ?」
「! そう、そうなんだよ、工藤が野球部の友達に借りた物なんだけど、月末に急に部の備品点検をすることになったとかでさ!」
「月末って、…休み明けすぐだね」

言うと、カイジはしょんぼりと頭を垂れて頷いた。事の緊急さは本人もよく分かっているらしい。

「だから今日か明日のうちになんとかしなくちゃなんねぇんだけど…」
「で、なんでデパ地下」
「え?腹ごしらえに」
「何それリッチ…まぁそれは置いといて」

物の溢れるこのご時世、今時の子供達からしたら野球ボールの一つや二つ、わざわざ取り返しに向かう価値も無いのかもしれないと思っていたが、そういう事情ならばちょうどいい。
心配しなくてもボールは捨てられずにきちんと市川の家にとってあるし、少年達が謝りに行けばそれはきっとすぐに返してもらえる。
窓ガラスの修繕費の件で、市川の人の良さは確認済みだ。自分の用のついでに彼らを連れて行けば、あっさり色々解決するのではなかろうか。

「私これから市川さんちに行くんだけど、一緒に行かない?」
「? いちかわ?」
「…カッパの人」
「げ!なんだよやっぱりあんたあいつの手先か!」
「はい逃げない逃げない、違うってば」

カッパと聞くや再び真っ青になり後ずさるカイジのシャツの裾を捕まえる。どれだけ市川を恐れているのだろうか。少し呆れてしまうが、中学生なんてまだまだ子供だ。
市川を見た事はあるようだから、少々独特なあの男の外見と罪の意識が合わさって、子供心にかなりの恐怖を感じてしまうのかもしれない。

「そんなに悪い人じゃなかったよ?現にほら、こないだ謝りに行った私はこうして五体満足でしょ」
「そ、そうだ、あんたよく無事だったな」
「確かに見た目はちょっと怖かったけど、ちゃんと謝ったら許してくれたよ。カッパでもヤクザでもなかったし、ガラスの弁償もかなりおまけしてもらったし」
「…そうなのか?でもなんでいきなり、その市川サンちに行こうって話になるんだよ」

半信半疑の目でこちらを見返すカイジは未だに少し怯えているようだった。なおも後退を試みているようで、シャツを捕まえている片手がじりじりと引っ張られる。
腕が伸びきる前に両手でシャツを捕まえ直すと、諦めたのかそれ以上は動かなかったが。

「なんでって、そりゃもちろんちゃんと謝りなさいっていうのもあるけど、ボール」
「!」
「私が投げたのと、その前に君らが投げたやつ、ちゃんと全部とっといてくれてるから。返して欲しいんでしょ?」
「ほ、」
「ほんとですか!?」

カイジが聞き返してくるより早く、その背後から声が上がった。上階へ続く階段の踊り場からだ。
見上げると、四人組のうちの一人である優等生風の少年が、手摺の影からひょっこり顔を覗かせていた。

「宇海お前そんなとこにいたのかよ!」
「どうする、それなら謝りに行くのが一番話が早いんじゃないか」
「工藤も!?」

カイジの非難の声をよそに、優等生に応えて下の階へ続く階段の踊り場からもう一人、火傷痕の少年が顔を出した。

「えぇ〜?でもそれってやっぱり怒られるんだろ〜?」
「…佐原……お前らなぁっ…」

背を向けていた人混みの方から不満そうな声がして、金髪の少年も現れた。一体どこに隠れていたのか。
三人それぞれ、楊枝に刺さった生チョコらしき物、割れた煎餅、焼き鳥を持っている。先輩を見捨てて試食を満喫していたらしい。カイジの言っていた腹ごしらえとはこの事か。
恨めしげに声を震わす先輩に歩み寄って来た後輩達は、悪びれもせず堂々とこちらに向き直り、優等生がぺこりと頭を下げた。

「…えぇと、君達」
「宇海です。で、こっちが工藤で、こっちが佐原。それから捕まってるのが伊藤カイジ先輩」
「……みょうじです…けど」

どうやら優等生はグループの外交役らしい。てきぱきと仲間を紹介され、思わずつられて自分も名乗ると、にっこりと笑顔を返された。
なんだか釈然としないが、ともかくやっと少年達全員に名前がついた。優等生が宇海、火傷痕が工藤、金髪が佐原。カイジは伊藤。まぁカイジでいいか。

「お前ら、ボールが取り返せそうと見るや出てきやがって…」
「あはは、すみません、びっくりしてつい逃げちゃいました、チョコ食べます?」
「いつの間にかあっさり捕まってるカイジさんもカイジさんッスよ、ほら、焼き鳥あげますから機嫌直してください」
「あの、今のボールの話、詳しく聞きたいんですけど」

宇海と佐原と共に持っていた煎餅をカイジにやりながら、工藤がおずおずとこちらを窺う。
確かボールは工藤が野球部の友人から借りたという話だったから、他の三人より事に真剣なのだろう。

「市川さんは今まで君らが市川さんちに投げ込んだボールは全部とってあって、ちゃんと謝りに行けば返してくれるつもりだって」
「実際みょうじさんがこうして無事ってことは、オレ達も意外にあっさり許してもらえるかもしれないね」
「だといいな。どっちにしろボールがあると分かったなら行くしか無いだろ」
「でもさぁ、それってやっぱり怒られに行くってことだろ?オレ絶対やだ、おっかねーよあのジジィ、なんか怪しいし」

市川宅訪問への決意を固めようとする宇海と工藤に、佐原が口を挟む。気持ちは分からないでもないが、市川が悪人であると決めつけたような口ぶりはいただけない。

「あのねぇ、聞いてたと思うけど君らが思ってるような悪い人じゃなかったってば。それに、おっかないってそりゃ怒れば誰だっておっかないよ、で、怒らせたのは誰?」
「…な、なんだよ急に」

ついきつめの調子で言ってしまうと、面食らった様子で佐原が言い淀む。しばし無言で睨み合うと、苦笑いを浮かべた宇海が割って入ってきて佐原を宥めた。

「まぁまぁ、佐原、みょうじさんの言う通りだよ。人ん家の窓を割っておいて、謝りも怒られもしないでボールだけ取り返そうなんて、虫がよすぎるもんね」
「なんだよ宇海まで…だってあのジィさん怪しかったろ?門に表札はないし、年寄りのクセに髪ばさーって長くて、黒ずくめでサングラスなんかしててさ!」
「…確かにただ者ではない感じだったな」
「だろっ?ねぇカイジさん、やめましょうよこいつについてくの!ジジィんちに用があるなら、こいつだけで行ってついでにボールも取ってきてもらえばいいじゃないスか!」
「うぐ?」

唐突に話を振られ、焼き鳥を頬張るカイジがきょとんと顔を上げた。大人しいと思ったらもらった物を素直に食べていたのか。
どうにかこちらに流れを引き寄せたいが、上手い文句が思いつかない。軽そうな割に強情な佐原の主張に、宇海と工藤も引っ張られているようである。
市川は確かにちょっと怪しい。サングラスについては盲目だからという理由が分かった程度で、それ以外については自分ではフォローのしようがない。

「あ」
「? なんだよ」
「…そのサングラスのことだけど、市川さん、目が見えないの」
「え?」

少年達の視線が一気にこちらへ集まった。ちょっと卑怯かもしれないが、いい手だったようだ。

「私も会ってからしばらく気が付かなかったんだけど…ほとんど何も見えてないみたいで、ガラスの破片踏みそうになったりしてたし、不自由してるみたい」
「…え、じゃああのサングラスって、そういう」
「独特な雰囲気はそういうのがあったからか…、怪しいなんて言って悪かったかもしれないな」
「いつもすごく怒ってるのに玄関先までしか出てこないのが不思議だったけど、見えなきゃ追いかけられるわけないよね…」
「…って、おい、なんか汚ぇぞ!そういう心に訴える感じ!」

途端、しゅんと反省ムードを漂わせる四人、と思ったが佐原はすんでのところで持ちこたえたようで、こちらを指差してキャンキャン抗議を始めた。
もう一押しかとさらに口を開きかけると、それより早くカイジが佐原を小突いて黙らせた。

「いてっ、な、なんスかカイジさんっ」
「謝りに行くぞ」
「えー!なんでですかぁ!わざわざ怒られに行くなんてバカバカしいでしょ!?」
「宇海もみょうじさんも言ってただろ、悪いことしたのはオレ達なんだから、怒られるのは当然だ。…それに、知らなかったとは言え目が悪い年寄りに何度も迷惑かけてそのままなんて、なんか気持ち悪いだろ」
「…出たよ…カイジさんのお人好し…」
「あはは、しょうがないよ佐原、どっちにしろボールは返してもらわないといけないし。どうせならみょうじさんと一緒に行く方がちょっとは怖くないだろ?」
「決まりだな」

なんだかんだ言って、後輩達は先輩であるカイジに逆らえないようだ。
あれだけごねていた佐原も、カイジがその気になってしまったと分かると諦めたようで、納得はしていないようだがすっかり大人しくなった。

「で、市川さんちに行くのは時間とか決まってるのかよ、みょうじさん」
「うん、三時に行くって連絡してあるんだけど。ここ出る前にお土産買わないと」
「土産、ですか」
「窓の修繕費、おまけしてもらったって言ったでしょ?だからそのお礼と、改めてのお詫び。でも市川さんの好みが分からないからずっと迷ってて」
「手土産なら食べ物とか飲み物とかの所謂消え物が無難だね、あんまり高い物だと相手も恐縮しちゃうからそういうのは避けて、年配の人になら老舗の看板和菓子とかハズレがなくていいんじゃないかな」
「…ほんとに優等生だった…、ちょっと一緒にお店見てもらってもいい?」
「時間もうすぐじゃん、さっさと決めろよな。あーあ、すっげー怒られる感じになったら全部カイジさんがやりましたって言お」
「おい待て佐原、なんでオレだ」

佐原の言う通り、少年達と相対した市川が怒り狂うような事があったらどうしようか。
と、思わないでもなかったが、自分はもう謝った後だから被害を被る心配はないだろうし、自分が見ている目の前で子供を絞め殺すだとか、流石にそんな事はないだろう。
五人でデパ地下の人混みに戻る。自分の後ろを少年達がぞろぞろとついてくるのを振り返ると、引率の教師か何かになったような妙な気分だった。
彼らの気が変わらないうちに市川の所へ連れて行こう。自分の手土産はこの際なんでもいい。

「…メインのお土産は別に用意できたし」
「? なんか言ったか?」
「いや別に。…カイジ君口んとこさっきのチョコついてる」
「えっ」





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