dusk. | ナノ




「神域、こんばんわ」
「おうなまえ、今帰りか」
「はい。神域、もしかしてうちのアパートに向かってます?」
「あぁ、近くまで来たから天の所で飯でも食おうかと思ってな」
「流石いいタイミングですね、今日はみんなで鍋やるんですよ。早く帰りましょ」
「鍋か、そりゃいい。最近益々寒くなってきたからな、ちょうど食いてぇと思ってたとこだ」
「神域そういうの多いですよね、何かと調度良い所に来るって言う」
「…お前、それ何持ってんだ?」
「これですか?マイ桶です。アパートのみんなでお風呂屋さん行った帰りなんですよ」
「あぁ、そう言や近くにあったな銭湯。で、他の奴らは?」
「天さん一家はまだお風呂屋さんです。私と井川君はジャンケンで負けちゃって…井川君は足りない材料の買い出し、私は先に帰っておこたつけて、お鍋を火にかける係に任命されました」
「なるほど、そりゃ大事な仕事だな。…俺も炬燵があったまるまで風呂行ってくるか」
「ちょちょちょ、天さん達ももうあがってはいますから、すぐ帰ってきますよ」
「だから今お前と一緒に帰っとけって?」
「そういうことです」
「どうするかなぁ」
「大体神域はお風呂入ってる間に気が変わって、ふらっとフグとか食べに行ったりしちゃいそうじゃないですか」
「気が変わったらそりゃしょうがねぇだろよ」
「だからそうならないうちに行きましょうって。ほらほら」
「ハイハイ…おい、髪ちゃんと拭いたのか?水垂れてるぞ」
「え、あぁほんとだ、急いで出てきたもんだから」
「あーあー、襟濡れてんじゃねぇか、タオルかせ、見てるこっちが寒ぃ」
「ええ?大丈夫ですよこれくらい。それより早く帰らないと」
「拭きながらでも帰れるだろ、ほら先歩け」
「わ、うぷ、あはは、前見えないですって」
「真っ直ぐだ真っ直ぐ。ったく、この寒い中よくこんな頭で歩けるな」
「わわわ、そんなごしごししないでくださいよ、フラフラします」
「いいから大人しくしてろ…ハハ、なんだお前、よく見りゃ体から湯気出てんぞ」
「え、そうですか?あー、お風呂あがってからすぐ出て来ましたからねぇ」
「茹でなまえだな」
「…人を蛸かなんかみたいに言わないでくれます?」
「ほ」
「!!!! っつ…っめた!!ちょ!!首!冷たい!!」
「おーあったけぇあったけぇ…あ、なんだ逃げるなよ」
「逃げますよ!なんですかその手!氷か!」
「しょうがねぇだろ、煙草吸ってるとこっちの手はポケットに入れらんねぇんだよ」
「全然しょうがなくないですよ、持ち替えるか手袋するか煙草やめるかしたらいいでしょう、て言うかわざわざより冷えてるほうの手を…!」
「じゃあこっちにしとくか」
「ひい!!」
「マシな方の手だぞ」
「大差無かった…!ほんともう離してくださいって!」
「だんだんぬるくなってきたな…おい、もうちょっと気合入れろ」
「おおお鬼ー!悪魔ー!体温返せー!」
「おー、いいぞもっと騒げ、またちょっとあったかくなってきた」
「どんだけ勝手ですか、っひ!?ひゃ、あはは!ちょ、くすぐったい!くすぐった冷たい!」
「ほれほれ」
「…二人とも、あんまり騒ぐとご近所迷惑ですよ」
「あれ、井川君?あ、なんだ、いつの間にかアパート着いてたんだ」
「おーひろ、買い物ご苦労さん」
「こんばんわ。遅いと思ったら赤木さんと一緒だったんですね」
「ごめん、私が鍵預かってるのに待たせちゃったね、寒かったでしょう」
「…お前も湯気出てるな」
「はい?」
「い、井川君逃げて!」





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