dusk. | ナノ




「いらっしゃいませー…って、あれ、天さんおはようございます、随分早起きですね」
「おはよ〜、って言うか、俺はこれからおやすみなさいなんだけどね…」
「えぇ?あ、徹麻ですか」
「そーゆーこと…コーヒーちょうだい」
「お疲れ様です、コーヒーかしこまりました…けど、晩ご飯とか朝ご飯とか、ちゃんと食べました?一緒に何か軽く作りましょうか」
「勝負に夢中で昨日の昼食い損ねてから何も…でも帰ったらすぐ寝るし、なんか今食べたら胃もたれしそうだから、今日はいいや」
「ほんとにお疲れですねぇ、なんだか珍しい」
「いつもはやかましいくらい元気なのに?」
「そうそう」
「失礼だなー、俺だって大人しい時もあるんですぅ」
「あはは、自分で言い出したんじゃないですか」
「嫁さん達も二人して俺のことうるさいとかでかくて邪魔とかさ」
「愛情表現ですよ」
「そうかな?」
「多分」
「そこは自信持って言ってくれないと…ふあぁ、あー、まぶたが重い…」
「天さん、多分その様子だと胃もおねむと言うか、お疲れだと思うんですよ」
「んん?そうかな…そうかも」
「コーヒーじゃなくてカフェオレにしませんか?ミルク多めでカフェイン控えめ、胃に優しいし寝る前にちょうどいいですよ」
「お任せします…」
「かしこまりました」
「…」
「えーと、カフェオレのカップ…」
「…コーヒーいい匂いだねぇ」
「え?そうですねぇ、…天さんなんか寝ぼけてます?」
「………」
「…、天さん、天さん起きてください、できましたよ」
「ふはっ?あ、あぁ、おはようございます」
「はいおはようございます、カフェオレですよ」
「はーい…いただきます」
「ちょっとぬるめにしましたから、すぐ飲めると思います」
「うん……、…あまっ」
「蜂蜜入りです」
「これほとんど牛乳と蜂蜜じゃ…はぁ、甘さが頭にしみる…」
「でしょうねぇ、徹麻の後じゃ」
「…、…、…ん、ぷは、ごちそうさま」
「早っ」
「おかわりください」
「え、はい、少々お待ち下さい」
「…ふあぁ、あー…甘くて幸せだぁ」
「天さん、お嫁さん達にお迎え頼みましょうか?なんだか家着く前にそこら辺で寝ちゃいそうですよ?」
「…なまえちゃん」
「はい?」
「お嫁に来ない?」
「はっ?」
「…だめ?」
「だ、だめというか、いきなりどうしたんですか、完全に寝ぼけてますね?」
「なまえちゃんがいい匂いで甘くて幸せだー…」
「はいそれコーヒーとカフェオレの話ですねー、惑わされませんよー」
「はー…すきだー…」
「はいはい、おかわりできましたよ、これ飲んで帰ってよく寝…天さん?あれ?もしもーし」
「………」
「爆睡してるし」



「いらっしゃいませー、あ、ひろくん学校帰り?」
「いえ、次の講義まで半端に時間が空いちゃって。しばらく課題やっててもいいですか…って、天さん?」
「あはは、気にしないでね」
「そうは言ってもこんな図体でかいのがカウンターの真ん中に突っ伏してちゃ…え?寝てるんですか?」
「うん。徹麻だったんだって」
「はぁ、ここ何日か電話しても捕まらないと思ったら…」
「何日も?あ、もしかして二三徹ぐらいしてたのかな。どうりでまぁ、やけにへろへろだと思った」
「いつからこうしてるんですか?」
「今朝開店とほぼ同時に来て、それからずっと」
「ずっと?でも、さっきまでランチタイムだったんじゃ」
「うん、お客さんが頭におしぼり乗せようがフォークでつつこうが全然起きなかったよ」
「営業妨害じゃないですか!」
「ほとんどのお客さんは天さん知ってるし、みんな笑ってくれてむしろいいネタになりました」
「ええー…それならまぁよかった…のか…?」
「お嫁さん達今日二人ともお仕事で、夕方引き取りに来るって」
「子供かペットか何かかこいつは」
「大きい子供だねぇ」
「……ん?なんか天さん、頭に千円札が埋まって…うわ、髪に五円玉結んである!」
「あ、何人かお会計ここ置いとくよって言ってたの忘れてた」
「とりあえずお札は回収して…、なんでこれで寝てられるんだ」
「ふふ、ずっと同じ体勢で疲れないのかな」
「…なんかなまえさん、いいことありました?」
「え?なんで?」
「いや、やけにご機嫌なような…」
「…そうかな、普通だよ普通」
「そうですか?ちょっとにやにやしてません?」
「し、してません」
「うあー!よく寝たぁー!」
「うわっびっくりした」
「もう天さん、あんた何やってんですか、なまえさんに迷惑かけちゃ駄目でしょう」
「おーひろ…ぅおっ、何!?何か頭がチャリンチャリン言うんだけど!」
「っふ」
「ついてますよ、四十円くらい」
「え?何?四十円??」
「う、うるさい…本人もうるさいしチャリンチャリンって…っくくく…!」
「はぁ、これで東西最強かぁ…」
「なぁ何四十円て!どうなってんの俺の頭!?」
「そんなのこっちが聞きたいですよ、どうなってんですかあんたの頭は」
「ひ、ひろくんもうやめ…ふ、あはははは!」
「爆笑してるし!」





back
- ナノ -