「また明日ねー」
「ああ、また明日」
夕食の後、シューティングゲームで盛り上がったり盛り下がったりなんやかんやで夜遅くになったので帰る達海を見送りに玄関まで来ています。
すぐ、そこ、タツミンってな感じで某コンビニの歌に合わせて替え歌出来るほどに達海の家は近いせいか、こんな風に遅くなっても泊まらずに帰って行くことが多い。
……まあ多少は寂しいかな、なんて思わなくもないけどね! どうせまたすぐ会えるんだしいいじゃないかと思えば寂しくないし。いざとなったら『直撃! 近所の達海さん!』やるからいいんだもん!
「お前またなんか変なこと企んでる?」
とんとんっとリズミカルに爪先で床を叩いてスニーカーを履いている達海がぼんやりしていた私の顔を覗き込んだ。
「いえ、そんな滅相もございませぬよ達海殿!」
「……怪しい」
あまりの必死っぷりに猜疑心を深めたらしい。
怪訝げに眉を顰めて更に近付く達海の顔。残念ながらこの後の展開は頭突きか蹴りだ。私の。
幾ら恋人同士であろうとせせせ、接吻だなんて恥ずかしくてやってられっかい!
顔を真っ赤にして仰け反った私の頭の上にぽふっと達海の手が置かれ、それとほぼ同時に離れていくタツミン。……なんかタツミンって響き可愛くないですか。
「ま、いいや。今日は早く寝ろよ」
ドアノブに手を掛け、振り向き様に達海はそう言った。
「……努力する」
火照った顔を見られまいと俯きながら私は答え、追い払うように手を振る。
「ホントかよ」
苦笑まじりな笑いを漏らした達海はじゃ、とドアを開けるとその向こうに足を踏み出して行った。
……やっと千秋と連絡が取れる。
滑り込んできた寒風に肩を竦めながら戸締りをし、私はそんなことを思った。
夕食前に千秋様から予告通りメールが来ていたのはいいものの、その内容が「電話汁」一言だけだったのだ。
汁ってなんですか汁って。ちいちゃんてばまた意味不明なことばかり覚えちゃって……お母さん不安だわ全くもう。
「……もしもし?」
自室に向かいながらポケットに入れていた携帯を取り出し、打ち慣れた番号をポチポチっと押して耳元に携帯を持っていく。
『あ、もしもし? オレオレ』
「私に息子はいません」
思わず終話ボタンを押すかと思いました。はい。
含み笑いを漏らす千秋に珍しく私が突っ込まされてしまった。普段とは逆だ、本当に珍しい。明日は槍でも降るかしら?
『槍は危ないわよ』
「勝手に読心術使わないで下さい千秋様」
どいつもこいつも人のプライバシーに土足で入り込んじゃって全くもう!
「そいで、なにゆえメールで済まさずにわざわざ電話でお話を?」
ドアを開けて部屋に入りながら、千秋の笑いを噛み殺した様子を音声から感じ取りながら問い掛ける。
『なんでって、メールだとあんたの動揺する様が良く分かんないじゃない』
当然とばかりに切り返され、私は溜息をつきながらベッドに勢いを付けて腰掛けた。
そんなゴーイングマイウェイなところは相変わらずなんですね。さすがですいや本当に。これ褒め言葉ですよ?
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