また冬が来た。

 季節は廻ると人は言う。

 でも私は違うんじゃないのかなー、とも思ってみたりして、

「例年より三度高い気温で……」

 とテレビの向こう側で、深刻めいた顔つきで話す美人なのになにやら残念なお天気おねえさんに向かって「ざまーみそ」と無意味に呟いてみた。

 『例年』だなんて古臭い言葉、今の世の中にゃ時代遅れどころか化石だよー。

 あー。私は赤坂 里美(あかさか さとみ)って言います。一応いっぱしの大学に通う、こたつ星からやって来たインベーダー(侵略者)でございます。

 ……嘘ですごめんなさいっ!だから岩なんて投げないで下さいおねげぇしますお代官さまぁぁぁぁあ!

 「お代官様は岩なんて投げないと思うが、どう思いますかそこのナレーターさん」

 いつの間にかこたつに足を入れていた桶川 達海(おけがわ たつみ)は、いかにも辛気臭そうな顔つきでテレビの向こうのお天気おねえさんに拳型のマイクを向けた。

 ……聞こえてたんかい。

 「聞こえてた」

 「いや、お願いだから心の中読まないでクダサイヨこのど阿呆」

 「……さりげなく人のこと貶すなよ」

 私がぎょっとしながら受け答えしていると、蜜柑の皮を剥きながら達海は溜め息混じりに言いこたつに突っ伏す。

 それでも器用に皮を剥く動作を続ける達海はただの馬鹿なのか天才なのか。

 てゆうか私今こいつのこと貶してたっけ?……うん、気のせいよ木の精。

 「――蜜柑うま」

 「そだね」

 蜜柑を口に放り込んだ達海はもごもごテレビを見ながら呟いた。

 私もこたつの上に積み上げられた蜜柑の一つに手を伸ばし、皮を剥き始める。

 「明日って何日だっけ?」

 退屈そうに頬杖をつきテレビを見ながら達海は私に問いかけてきた。

 うーん。何日だったっけかなぁ。
 一瞬逡巡するもカレンダーがその部屋にあるわけでもなし、ケータイとか持ち歩く性質(たち)でもないし、達海に訊かれたことに答えることは出来ない。

 ちょっと思案した私は、ケータイでソリティアをし始めた達海にこう言った。

 「二月の中旬かそこらでしょ、きっと」

 「だろうな」

 ……短く答えた達海の表情がちょっぴり拗ねた感じに見て取れたのは気のせい、かな?

>>Next



bkm
>>top
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -