近寄らないで
ちょっと学校に顔を出したのがいけなかった。
レポート提出だけだからって、化粧もしず、服装はジャージで来た自分を心底恨む。
近寄らないで
『大木さん!』
後ろから、私が大好きで大好きで、たまらない声が聞こえる。
無視することもできない私は、とりあえず後ろに振り向く。
「し、新開くん…。」
笑顔が引きつっているのが鏡を見なくてもわかる。
出来れば、こんな姿は見られたくない。
『大木さん、今日は随分ラフな格好だな!』
これをラフと言うのか。
家着でしかない。
新開くんは、笑顔で近くに来て私の横に立った。
「わああ!新開くん!!」
『どうかしたか?』
新開くんは、不安そうに私の顔を覗いた。
「わ!あんま、みちゃダメ!」
私は、手を顔の前に出して新開くんが見えないようにする。
すると新開くんは、私の手を掴んでどかした。
『化粧しなくても、大木さんは可愛いんだな。』
と笑顔で言われた。
私は、顔から火が出そうになりながら新開くんの笑顔をただただ見ることしか出来なくて、新開くんはそんな私の顔を見て、『で、今日はなにしに来たんだい?』と聞いてきた。
「今日は、レポート出すだけだから…。」
『だからか〜!じゃあ、一緒に飯行かないか?』
「新開くん?聞いてた?私、もう帰るんだけど?」
『わかってるさ。だから、帰るだけなら飯行こう?』
新開くんは笑顔で問いかけてきて、私に断る言葉を出させない気であろう。
せめて、着替えさせて軽く化粧させてくれないかな?
「いや、さすがにジャージは…。」
『大丈夫さ。俺なんて、よくジャージのまま行くぞ!』
「え、あ、でも…。」
『な?だから、行こう!』
新開くんは、私の意見なんて御構い無しで、笑顔で『何喰う?』とか聞いてくる。
すごく恥ずかしくて、早くこの時間が過ぎてしまえば良いのに。
2016/03/25
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