ハカリキレナイ[高校生/同級生]

いつからか、朝起きて窓から顔を出し手を振るのが日課になってしまった。

ハカリキレナイ


朝の6時。
季節は、春から夏に移行して行くような時期。
外は明るいが、少し肌寒いようなそんな時期に、彼は半袖短パンで走っている。
テニス部の黒羽春風。
通称バネ。
彼とは中学の頃からの同級生で、気がつけば同じ高校を受験し、それももう最終学年に3年生になった。
大学に進学するのか、専門に進学するにか、はたまた就職するのか。
そんな歳になった。
彼がどうするかは知らない。
聞きたくても聞けない。
聞いたら駄目な気がする。

今日も窓を開けて外を見ていると、赤いTシャツを着たバネが見えてきた。
手を振っていると、バネは「おお!おはよう!」と言い過ぎて行った。
バネの背中を見て「おはよー!」と言って窓を閉める。
毎日のこのやり取りが1番好きで、気がつけばこのやり取りも5年目に投入した。
私は、いつも通り学校へ行く支度をした。
荷物を整え、朝食を食べて8時には家を出る。
玄関を開けると、そこにはバネがいた。
「おお。ナイスタイミングだな!」
「あれ?なんでいるの?」
「あ?あー…まーなんだ、あれだ!冥子と一緒に行きたい気分だったんだよ。」
とバネはいつもの笑顔で答えた。
「なんだそれ!ま、別にいいけどさ!」
「おう!じゃ、行くぞ!」
「はーい!」
いつもはないバネとの時間。
嫌でもなく、どちらかと言えばちょっと嬉しくて少し優越感。
バネは面倒見がいいから、後輩にもモテるし競争率は佐伯くんには敵わないけど、少ないわけではない。
そんな彼を好きになった私の心は、4年目に突入した。
でも、居心地の良い“同級生”ポジションを今更手放せない。
葛藤に追われる日々。
「冥子」
「うん?」
「いつも、ありがとな。」
「なにが?」
「朝。元気出んだよ。」
「バネには強くなって欲しいからね!」
「おう!当たり前だろ!」
バネは腕まくりをして答えた。
そんなバネとの時間を壊さないために、同級生ポジションを保つ。


ハカリキレナイ
ドチラガイイカナンテ


2014.05.07

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