三月三十一日。そこそこ楽しかった学生生活に別れを告げて日付けが変わった四月一日。社会人としてデビューを飾る。


その日から一日の三分の一を丸々仕事に費やすなんて。しかもアルバイトとは一変。責任ある仕事の手伝いをしたり、もっと濃い人間関係を築いたり。寝坊も出来ない、仮病も使いにくい。終いにはズル休みなんて。もっての外。果たして真っ当にやっていけるのかどうか。毎日朝ちゃんと起きて通勤出来るのかどうか。言葉をきちんと使えるのかどうか。不安ばかりが押し寄せる。

お陰で、足は竦みそうになるわ、顔の筋肉は上手く動かないわ、やけに汗やら脂が顔から出てテカってるわで。一日を消化するのがやっと。週末にちょっと遠くに遊びに行きたいとか、オールしたいとか。あまり思えなくなってきた。


そんな私に友達は口を揃えて「付き合いが悪い」だの「一日くらいいいじゃない」だの。好き勝手言う。でも私は皆と違う。一人暮らし。だから自分で家事をこなさなければならない。

週末はいつも決まってこう。五日分の食料を買い溜めし、常備品を幾つか作って保存の為に冷凍庫へ。手洗い用の服をどうして買ってしまったのか、自分にブツブツ文句を垂れながら隣で洗濯機の音を聞きつつ洗面器の中の洗濯物を綺麗にしていき。スナック菓子じゃなくて今度からはゼリーやヨーグルトにしようと部屋の中で心に決めながらラグに掃除機をかける。

こんな事をしてるから。しょうがないじゃない。週末なんて潰れて当たり前。


とりあえず目的も無く、やりたい事もなく。適当にこの会社に入社した。けれど、その分迷惑だけはかけたくないという思いがあったりする。やりたい事じゃないからなんて、言い訳にはならない。分かってる。それにいくら新入社員だからって、いつまでもそれが許される筈もない。

だから、スキルも知識も何もない今の私が出来る事といえば、簡単な雑用位。先輩に頼まれなくても目についた事をやる。そうする事で少しでも皆の役に立てれば。仕事を覚えていければ。やりたい事が見つかれば。この会社に入ったのは無意味じゃなくなる。私の居場所が見つかる。結局は心がけ次第だと分かってる。

折角縁があったんだから。なんて思うんだから。私はなんて単純なんだろう。そしてつくづく、真面目で馬鹿を見る性格だと思う。


日にちが経つにつれて同期の子達ともどんどん仲良くなっていき、付き合いも多くなっていく。そして合コンに誘われたり、それに近いような食事会に誘われたり。でも私はどうもそういうのが昔から苦手。だから何かと理由をつけて断っていた。

すると同期の子達はそんな私に向かって「早く男作れば」だの「飲みに行くくらいいいでしょ?」だの。友達と同じ様に口を揃えて言ってくる。「だったら一緒に手伝ってくれる?」と聞けば皆口を紡いじゃうんだろう。言った事はないけど。反応は目に見えている。

損な役割を進んで申し出る性格だと思う。適当に出来ない性格なんだと思う。絶対に自滅するタイプだと思う。でも仕事を少しずつ覚えてきたり。小さな事でも先輩が評価してくれるのが楽しみだったり、喜んでもらえたり。結構小さな事でも心に残ったりする。

別に男の人が嫌いなわけじゃない。サボるのも嫌いじゃない。けれど、今一生懸命やればもっと大切なものを掴めるような気がして。そう思えば損だとは思えない。だから今のままで別にいい。

合コンやお喋りもいいけど、何気に頑張ってる私のままでいい。


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