一年の内で一番寒い一月。正月は実家の方へと帰るのを止めた。結婚だなんだでうるさく言われるのは嫌だし地元の友達と馬鹿をやる歳でもない。かわりに猿飛と出かけ、数日はわりとのんびりと過ごした。

初出社のその日は特別寒いように感じた。前日の夜には満点の星空が広がっていたから。満員電車のエアコンですら効き過ぎだとは思わない位に寒さが肌に刺さる。街に出ると正月用の飾りつけがされているディスプレイ達。クリスマスとは違って華やかさはないけれど、それなりの雰囲気はまだ残っている。

オフィスに来てみればいつもと変わらない同じ様な朝の始まり。同僚の子らの話に少し付き合い、ハゲ課長の挨拶を聞く。そして自分のデスクへと戻る。やはり何も変わりはしない。納会のあった時から何一つ。ここに来ても変化など望めないのだ。そして一息つきたくなった。煙草を吸いに喫煙室へと一人で向かう。


誰もいない喫煙室。煙草に火を灯し、思いきり煙を吸い込む。そして溜め息にも似たものが吐き出された。ぼんやりとしながらも、とにかく煙を吸い込みにかかった。そうしているうちに気がついた。ここ何日か脳を休ませていたせいか、考え事を探している事に。


休みに来てるってのに…


ここに来るとそうなのかもしれない。くせになってしまっているようだった。

あの非常階段もしばらく行っていない。冬になり風向きが北寄りになったせいで強く吹き付けてくるからだ。そのうえ冷たい。でも風向きが変わったらまた行けるようになるだろう、恐らく春頃。沖田総悟に教えられた時期もそうだったから。それを考えれば春も待ち遠しい。毎年毎年新入社員への対応に追われ、憂鬱ですらあった時期だった。それを考えると少しだけ心が晴れた気がする。そして立ち上る煙もいつしか消えていた。



昼になり昼食をとっているところへ携帯電話が鳴った。高杉だった。年末に出かけたばかりなのに。どうしたのか聞いても相変わらず要件は言わない。ただ店に来るよう言われて電話は切られた。

正月休みの間、他の部署や会社も休みだからといっても仕事は溜まる。それは私を悩ますには十分の量だった。それでも休日を返上して働いただけの事はある、就業時間が終わる頃には終わりがみえてきたから。あの二日間がなかったらもっと大変だったかもしれない。今更ながらあの二日間は貴重なものに思える。

残っていた人達に軽く挨拶を済ませ、オフィスを出て高杉の元へと向かった。


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