朝になり太陽が昇り

昼になり太陽はその存在を大きくし

夕方になりやがて月が顔を出し

夜になり月が世界を支配する

多くの星を従えて

周りをキラキラ照らし出し

やがて自らも消えていく

朝日にとって代わられるその時まで




街の中だとターミナルの明かりが眩しくてよく夜空が見えないからという彼女を連れて2人郊外の野原に来てみれば、それでも見えない月と星屑。

彼女はそれでも首が折れまがってしまうんじゃないかと思う程、懸命に上を仰いでは押し黙ったまま一心不乱に僅かな光を探してる。どんなに小さくてもいい星屑をその手で受け止めようと、野原を駆け巡る足元を囚われまいとして、いかにも必死にもがき歩くのだ。けれども生命力あふれるその彼女の足元には今更ながら彼女を邪魔しようとする自然界の無粋な輩はもう俺以外にはいないらしく、彼女はただこのひろい野原を駆け巡っては落胆の溜息をその大地へと吐き続けるのだった。

アイツが死んでからあんたはいつもそうだった。七夕だから奴が戻ってくると、七夕だから奇跡でも起きると思ってんですかい。とんだバカヤローだ。そんなので一々死者と出会えてたら誰もが亡くなった人間を敬う事もせず、目が真っ赤になるまで泣きはらしてさも自分をいい子に見せようと演出するバカな女共が困った事になるだろーが。

生憎俺はいつまでもお人好しじゃねーんだ。ああ、あんたのそんな姿を見るのもどうやら限界らしい。ちくしょー、苦しくて苦しくて胸が痛ぇ。亡くなったアイツを想い、年に1度だけでもアイツと思しき夜空の星を探し求めて、月に、星に、それらしき影を求めてはアイツを想うあんたの笑顔が俺には眩しくて、美しすぎて、そしてとても残酷な物にすら感じてしまう。そんな俺の心はまるでこの夜空の様に、一筋の光もない、真っ暗で、どこまでも広がる夜闇の様であるに違いない。(恐らくあんたからしたら俺の心の方が残酷に感じるだろう)

なあ、俺が今日曇りになるように逆さまのてるてる坊主を仕組んだなんて言ったらあんたは一体どんな顔をする?笑うだろうか悲しむだろうか怒るだろうか。アイツを思っては微笑むアンタをもう見たくねーだんだ。そんな事を言ったら「しょうがないわね」と言って呆れながらもそんな俺を受け入れてくれるのだろうか。


「もういいんですかい?」
「…うん。もういい」
「…そうですかい」
「…総悟がいてくれるから」


もうすぐ時計の針も今日という日の終わりを指そうとしている。もうすぐこの七夕を舞台にした茶番劇も終幕を迎える。あんたはもうその瞬間から織姫なんかじゃない、ただの普通の女に戻らざるを得なくなるんだ。ああ、これであんたはやっと俺の元へと戻って来てくれる。その涙で潤んだ瞳に映るのは真っ黒い空でも無く、キレイに輝く星空でも無く、目の前にいるこの俺だけを映してくれる事になるのだろう。さあ、これで俺にもようやく、ほんの僅かだけれど小さく美しく輝くそれはキレイな星の欠片が瞬き始めた。


















07/07/08 Long live the prince of the S!! S・okita
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