彼女はとても 物わかりのいい子だった
 
集団に縛り付けられる生活の先になにがあるかわかっていた
 

 
弱音も涙もみせない女の子だった
 
 
僕は
それを知っていたし
識っていた
 
 
彼女を愛していたし
でも止めなかった。
 
 
 
 
 
 
 
昨日の夜
 

 
君が空を飛んだらしい
 
 
 
 
 
 
 
へぇ、
 
どうだい、空気抵抗が無くなる瞬間の気持ちは
 
 
キモチよかった?
 
僕としてる時より良かったならなんだか空にジェラシー感じちゃうよ。
 
 
 
 
静かにすすり泣く女たちは明らかに君の視界にいない人間たちだった
 
 
それを慰めるようにたかる男たちも滑稽すぎて笑いを抑えるのが大変だったよ
 
 
 
あまりのくだらなさに煙草を噛み潰して苦い味が口の中に広がった
 
 
 
その夜君を抱きたくなった
 
君はいなかった
 

その夜
 
僕は空を飛ぶことにした
 
 
君が飛んだ場所から見渡す夜景は確かに美しい
 
遺書なんて無粋な真似はしない。
心残りなんて、ないからね本当に。
ヒュオオと吹き上げる風が前髪を揺らした瞬間
 
僕は酸素に身をゆだねる
 
 
ははっ、すごい!
 

 
 
急速落下
急転直下
 
(ヒッ)
 
なにを
 
今更
 
でも

 
逢えない
 
こんなことしたって結局は0への還元行為なのだ愛の証明などではないのだおちるだけの愛情はもう必要とはされないのだ何故ならその愛を一心に浴びる君はもう
 
0だから
 
 
「わああああっ!」
 
 
ガバッと起きた布団の上、汗だくの体は火照り気持ち悪い
 
ああ、夢か
そうか、飛べなかったのか
くそ、涙が止まらない
くそ、静まれよ
 
 
ごめんね愛すべき僕の姫
 
 

(0にいくら僕の愛をかけても無駄だ)



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