嗚呼今日も呼吸しはじめてしまった。
見上げた空は揺れるレースのカーテン越しで、随分と白くなってしまった。
君は私が寝ている時、常に起きているんじゃないかと思う位に、朝起きて目を開くと目が合う。嬉しそうに微笑む君と、寝過ぎた朝の始まり。
朝の挨拶は要らない。飛び立って逃げる為の翼は君にもがれてしまった。意味が有るようで無い確認の目線を交わせば、そこからは常に愛の時間となる。
誰の味方でも無かった私が、ただ盲目的に愛を愛そうとした日。あの日からずっとそうだ。
「女同士の固まりって苦手だな」
仰向けの私は何処に力を入れるでもなく寝そべっていて、君は鳥が啄む様なキスを体中にして遊ぶ。
「たとえば男を探す合コンの時、やる気満々なのは恥ずかしい。だから『私は求めてませんけどここに連れてこられました。だけど貴方から声を掛けてくれるのは構いませんよ』っていう雰囲気が」
今日も天井はそこにある。彼越しに何度も見つめた私の部屋の天井だ。それには何の変化もない。
部屋も特段散らかっていると言う事もなく、この場所でイレギュラーなのは常に彼だけだ。
「そんな嫌な女の子に引っ掛かる男なんてろくなもんじゃないわ」
私のお腹から君の視線が飛んできた。上目遣いのその視線と、笑み歪む口許。ペロリと臍を舐めて君が隣に寝転がる。
「あんたは引っ掛からないでね」
ふふ、と笑うと勢いを付けて立ち上がった君は身支度を始める。制服を身に纏う姿にあ、高校生だったなぁとぼんやり考える程度には私は彼の事に疎い。
「僕以外とは、固まらないでね」
疎いと言うよりは気付きたく無いので、それらの事項をどうでもいい場所に押しやるのだが、そういえば思い出してしまった。
君は弟だった。
君は、弟だったよね。
サヨナラも行ってきますもなく君は10秒後部屋を出ていくでしょう。いつものこと。そして彼女の待つ場所へ、無垢な振りして行くんだ。
私は今日も呼吸しはじめてしまった。
何をしていいかも定められぬまま。
女同士の固まりどころか、君とも曖昧な癖に何を強がっていたのだろう。身を守る様にベットの上で丸まって自分の体を抱き締めた。
温度の冷めていくシーツ。
臆病で、気が付かない内に息が絶える事を願う小鳥、午後3時の事。
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