意地悪な君が勇者になるらしい。
笑える話だ、村一番の悪ガキ大将。
君が正義の剣をふるう。
これはね、人間でも動物でもない生き物がたくさんいて、魔王とかそういうわかりやすい悪がいる世界の話。
「ほら、立てよ」
ぼくは知ってた。
君がぼくに 本気をださないこと。
ぼくが本当に痛いとおもったら、君の攻撃がとまること。
村に生まれた異端児のぼくに女かどうかなんて関係はなく皆が石を投げた。
皆死ぬことを深く望み、殺すことを畏れていた臆病者なのに。
きみは口悪くいじめてくるくせに、ほかの子みたいに石をなげない。
怪我をしているぼくに、はじめて絆創膏をくれたひと。
きみと交わした言葉は少ない。ずっときみが貶してぼくは黙っているだけだったから。
なぜかそうすればきみは、それを不満に思っているようだった。
だけど今ならわかるかもしれない。
きみはぼくと友達になりたかったのだ。
村を去る君の背中をみながら、様々な後悔をしていまわかったこと。
ずっと君と交わっていたかった。
どんな形でも良かった。
これはぼくの物語。
絶対悪がないかぎり
君の役目は君を縛り続ける
ならぼくは君のための魔王になろう
もといた魔王?そんなものは役からはずされた。
これはぼくと君の物語。
そして、ぼくが一生君を縛るのだ。
ぼくを倒したきみは、全ての祝福をうけ幸せになり、どこまでも深い呪いをその身に受けるだろう。
きっときみは
ぼくのことが好きだった。
君を愛したぼくの、不器用なラストラブストーリー。