今回の依頼はいつも以上に困難な様で随分と手こずってしまう。悍ましくも蠢く低悪霊に怯んでしまう自分が情けない。息を切らしながら体中も傷だらけだけど、気にしてられない。ゆらゆらとただ身体を揺れ動くそれをじっと見つめ次の攻撃を構える。

近付く足音、ひたり、ひたり。1歩ずつ近づく度に強ばる身体。

また来る敵の攻撃を超能力で跳ね返すも体はフラフラと限界が近い。長期戦で慣れない超能力を使いすぎたせいだろう。悔しいけどエクボならこんな敵、苦戦もせずに終わっていただろう、と思ってしまう自分もまた彼につくづく頼りきりなんだなと実感してしまう。

こんな自分を見たら「仕方ねェ奴だなァ」なんていつもの不敵な笑みを浮かべてあんな敵、すぐに倒してしまうんだろうけど

スーツ姿の後ろ姿を思い出してぼりやり考えてる内に敵はあろう事かバリアを突き破って来ていた。やばい、油断してしまった
今にも突き刺すだろう、その鋭い爪先をこちらに向けていた。

身体は上手く動けずそれをただ見つめるだけしか出来ない。

その鋭い爪は振り下ろされて、死を覚悟した


はずだった




「さっさと俺様を呼びやがれ、馬鹿野郎」


憎たれ口で何時もよりもしかめっ面の彼が何故か私を抱き抱えていた。状況が分からずにただ瞬きを繰り返すだけで、その様子が可笑しいのかニヤリと笑みを浮かべる。

「あ、れ…エクボ…?私…」

「おう、エクボ様だよ。たまたま来れたから良いけどよ、お前はもう少し俺様を頼りやがれ」

「うっ…ごめんなさい…」


何時もより声を低めて叱られれば思わず謝罪をしてしまう。そして何を考えたのかボロボロな身体を見れば小さく舌打ちをした。抱き抱えていた私を下ろし自分のスーツの上着を私に羽織られれば、彼の匂いがして少し安心する。
エクボはまた敵に向き直し、鋭い目付きで睨み付ける



「おい、三下ァ

俺様の為に消えてくれるよなァ?」


ニヤリと不敵に笑い、霊力も最大限。
近くにいる私でさえその力にゾクリと背筋が凍る。苛立ちを隠さずに敵意を向ける彼から目を離せなくなるのは、何故なんだろう。


「お嬢ちゃんは大人しく俺様に守れてれば良いんだよ」

振り向きもせずに背中越しから伝える言葉が力強く感じて、やっぱり彼には敵わないと改めて実感されてしまう

少し赤くなる頬を隠しきれはしないまま
ありがとうと消えそうな声で呟いた



(その背中がいつも恰好いいなんて絶対に言えないけど)


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