十一月某日。時間は夜の十一時をすぎた所で、私はすっかり冷えきった空気に白くなった息を吐いた。

もう待ち始めてから一時間になる。仕事が終わる時間が遅くなると告げた時に、迎えに来てやると言ったのは向こうなのに。
私はため息をついて、会社の玄関ホールを後にし、寒空の下歩きだした。

会社から自宅はそう遠くはない。待っても迎えに来ない彼に内心怒りを覚えながら、早足で、電柱も少ない暗がりに、私は一人入っていった。



ちくしょう、予定を間違えた。俺様の予定では今日は、守衛のやつ出勤のハズだったのに。なんの間違えか今日は休みになってやがった。

折角身体を借りて、暗がりを帰るアイツのボディガードになってやろうと思っていたのに、予定よりも一時間以上も遅れてしまった。こんな事なら霊体でもいいから早く向かっておくんだった。

……俺様の立てた、最高のプランが台無しだ!

まぁその責任は俺様にもある。それに今はそんな事考えていても仕方が無いだろう。
今はともかく、一刻も早くアイツの所へ向かわなければ。
俺様は全力疾走した。アイツの職場は、もう目の前だ。



やはりこの時間ともなると、電柱のあまり無いこの通りは暗く、人通りも少ない。

そういえば近所の子供が、夜にこの辺で出る、って話をしていたけど多分子供の戯言だ。いたとしてもおそらくは彼――エクボ位だろう。
エクボの姿が頭をよぎり、私の気分はまたもや沈んだ。迎えに来ると言ったのは向こうなのに。今度めちゃくちゃに怒鳴ってやる。

溜息をつきながら、落ちた目線を戻すと――眼前に、何かがいるのが目に入った――私は目を細め、ぼんやりとしたそれを見た。
それはこちらを見たまま動かない。

なにか言い様のない恐ろしさと寒気に、先程の子供の言葉を思い出す。まさかあれは戯言ではなく本当の事だったのか!
逃げようと、今来た方向へ戻ろうとするも脚が動かない。本能的な恐怖から、身体中が震えるのがわかる。
しかも目の前の霊は、そのぼんやりとした姿から口を三日月に曲げるとこちらに向かい走ってきたのだ!

「誰か、助け――」
「伏せろ!」

頭上から響いた声に、私は身を屈め身体を伏せた。電柱から降ってきた何かは拳一撃で霊を地面に叩き付け、除霊してしまったのだ。

「あ、ありがとう…ございま……っ!?」
「……悪ィ、遅れた。」

目線を上げ、確認すれば、霊を除霊したそれは紛れもなく私が待っていた人物そのもので。

「ちょっと、手間取っちまってな。」
「…エクボ…もうっ、バカ…バカ…!」
「ははは、そんな泣くなよ。」

自然と涙があふれる。エクボに抱き着き力ないパンチを食らわせれば、それは全部受け止められてしまった。

「…ここは冷える。早い所帰ろうぜ。」
「……うん」

ずずっ、と鼻をすすり、エクボの手を握って自宅まで歩き出す。普段は冷たく感じる彼の手が、心無しか暖かい。「……ありがとう。」ボソッと呟けば、少し先を歩いていたエクボがこちらを振り向き、いつもの笑顔でにっとわらった。

星空☆ヒーロー

「…今夜は星が綺麗だなァ。」
「…月もきれいだね。」
「……おい、今夜は寝かさねぇからな。」
「…………!!」

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